ゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC 2024」(パシフィコ横浜、8月21〜23日)でバンダイナムコ研究所は「AIによるコンテンツ生成の落とし穴? 〜ゲーム開発向け大規模言語モデル運用の光と影〜」というテーマの講演をした。同社のAIエンジニア兼マネージャーである頼展韜さんと會田翔さんが、ゲーム開発における大規模言語モデル(LLM)の実践的な利用方法と課題について、具体的な事例を交えて解説した。
講演は主に、AIを活用したゲーム実況配信とゲーム内テキスト生成の2つの領域に焦点を当てた。特にゲーム内テキスト生成においては、LLM活用時の5つの「落とし穴」とその対策を紹介した。
バンダイナムコ研究所の「ゴーラウンドゲーム(ごらんげ)」プロジェクトでは、LLMを活用したAIキャラクターによるYouTubeライブ配信を実施している。このプロジェクトでは、麻雀ゲームの実況や雑談配信を通じて、AIキャラクターとユーザーがリアルタイムに交流する。
例えば、視聴者がYouTubeのコメント欄に書き込んだメッセージをAIが読み取り、それに対する返答を生成し、音声合成技術を用いて読み上げるという形でコミュニケーションが行われている。その中のコンテンツの一つである「ごらんげ麻雀」について、會田さんは詳しく説明した。
ごらんげ麻雀は、AIキャラクターが独自ルールの麻雀ゲームをプレイする映像コンテンツだ。単にAIが麻雀をプレイするだけでなく、LLMを使用してゲーム進行に応じた会話を生成し、さらに音声合成技術を用いて発話を行う。視聴者は、AIキャラクターがまるで人間のように麻雀を打ちながら会話する様子を楽しめる。さらに、このAIは通常の配信者同様に視聴者のコメントにも反応する。
また頼さんは、AI応答速度の課題とその対策についても言及した。高品質な発言を生成するには複数のAIを連携させる必要があるが、これが処理時間の増加につながる。この問題を解決するため、バンダイナムコ研究所では先回りして発言を用意する方法を採用している。
具体的には、複数のAIを同時に動かし、予想される話題についての発言をあらかじめ作成・保存しておく。これにより、実際に必要になった時にすぐに発言を取り出して使用できるため、視聴者は、あまり待たされることなくAIキャラクターとのやりとりを楽しめるようになっている。
ごらんげマージャンでの経験を踏まえ、バンダイナムコ研究所が次に取り組んでいるプロジェクトについても紹介した。このプロジェクトでは、ゲームテキストの素材生成にLLMを活用することを目指している。YouTubeのライブ配信とは異なり、このプロジェクトでは時間をかけてより高品質なテキストを生成することが可能だという。
一方、ゲーム内コンテンツの生成には課題もあり、“5つの落とし穴”としてそれぞれ次のように指摘した。
まず、LLMが生成するテキストの一貫性や正確性が挙げられる。例えばキャラクターの呼称が途中で変わってしまったり、ゲーム内の設定と矛盾する情報が含まれたりするケースがある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.