「ここは絶対にAIに置き換わらない」──。元日本マイクロソフトの業務執行役員で、現在は日立製作所のエヴァンジェリストなどさまざまなシーンで活躍している澤円さん。講演依頼などを受ける中で、最近よく来る質問が「AIは仕事を奪うんですか」だという。
AIが第4次産業革命とも言われる中、人と仕事とAIの関係はどうなっていくのか。日本HPが石川県金沢市で9月18日に開催したイベントで、「AIが我々の仕事を奪うってホントなの? 〜生成AIと人間のステキな関係〜」と題して澤さんが講演した内容から、一部を抜粋して紹介する。
まずは歴史を振り返ることで、仕事がどのように奪われてきたかを澤さんは解説する。
最初の第一次産業革命では、蒸気機関によって紡績が機械化された。それはイギリス・マンチェスターが発祥の地とされる。「なぜこの地で産業革命が起きたのか。諸説ありますが、そのうちの一つの理由と言われているのが『労働人口の減少』です。今と同じ」(澤さん)
都市化が進むことでブルーカラーの労働人口が減った分を機械化で補う、という流れがあったと澤さんは指摘する。ただ、それによりブルーカラーの一部は機械に仕事を奪われることになった。そこで「ラッダイト運動」(機械打ち壊し運動)が起きたが、実はマンチェスターでもないことはなかったが、実際に激しく行われたのは異なる地域だった。
「地域差があったのは情報を迅速に得る手段がなかったから」と澤さん。情報が伝わらないまま機械化が進んだ結果として、突然仕事を奪われ動揺する人が生まれたというわけだ。
一方、マンチェスターでは機械化によって生まれたものがあった。サッカークラブの「マンチェスター・ユナイテッド」と「マンチェスター・シティ」だ。「1つの都市に2つのサッカークラブがあることも例外的ですが、その2つともが世界トップクラス。実は、この2つのチームは産業革命によって生まれたもの」(澤さん)
産業革命により余暇が増え、「サッカーでもやるか」と労働者を中心に盛り上がった結果、強いチームが生まれ、投資も集まり、さらに強くなり……というサイクルが生まれた。
続いて第二次産業革命の主役として澤さんは自動車をピックアップ。「自動車が登場して、『わ、これすげえ』って世界が熱狂したかというとそんなことはなく、悪魔の乗り物と言われていました」
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