スウェーデン王立科学アカデミーは10月9日(日本時間)、2024年のノーベル化学賞に、米ワシントン大学のデビッド・ベイカーさん、さらに米Google DeepMindのデミス・ハサビスさんとジョン・M・ジャンパーさんを合同で選出したと発表した。ベイカーさんは新しい種類のタンパク質を設計などを、Google DeepMindの2人は、タンパク質の構造を予測するAIモデル「AlphaFold2」を開発したことを評価された。
AlphaFold2は、2021年に当時のDeepMindが公開した、遺伝子配列情報からタンパク質の立体構造を解析できるAIモデル。タンパク質は複雑な立体構造を持つため、その特定には数カ月から数年の時間がかかるといわれている。この問題は「タンパク質折りたたみ問題」として50年以上、生物学の課題であった。
この問題を解決するために生み出されたのがAlphaFold2だ。AlphaFold2を利用することで、タンパク質立体構造を短時間で予測するなど研究作業の効率化が可能に。プラスチック汚染や抗生物質耐性など、さまざまな研究に寄与し、現在までAlphaFold2は190カ国200万人以上の人々が利用しているという。
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一方、ベイカーさんが所属する研究チームもタンパク質の構造予測ツール「Rosetta」を開発。AlphaFold2などタンパク質の構造予測ツールの礎を築いた他、03年にはどのタンパク質とも異なる新しいタンパク質の設計にも成功している。
スウェーデン王立科学アカデミーはこれらの功績について「生命はタンパク質なしでは存在できない。タンパク質の構造を予測し、独自のタンパク質を設計できるようになったことは、人類にとって最大の利益をもたらす」と評している。
8日(日本時間)に発表したノーベル物理学賞では、カナダ・トロント大学のジェフリー・ヒントンさんと米プリンストン大学のジョン・ホップフィールドさんが選出された。2人は現在のAIの基礎技術となるニューラルネットワーク研究の第一人者。そのため24年の物理学賞と化学賞はAI関連技術で功績を残した研究者たちが受賞することになった。
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