これに対して、マスクドさんは「製造業では1mmのズレや、1ポイントの誤差が100万円単位の損失につながることもある。設計や製造対応に関しては、まだかなり慎重にならないといけない」と指摘する。
むしろ注目すべきは、現場でのコミュニケーションや記録の領域だという。「工場の方々の連絡事項やメモ、作業手順の伝達など。数値では表せないが、手の動かし方や作業のコツといった内容を、より分かりやすく伝えるために使える」。音声をテキスト化してマニュアルを作成するなど、手間のかかる作業の効率化にも効果を発揮する。
「普段の業務から使っている製造機器がメインで、それを生かすためのブースターとして生成AIを位置付ける」という考え方だ。ただし、設計や製造前の確認、品質計算といった領域については、従来通りの手法を重視。生成AIはあくまでも補助的なツールとして、使い分けを意識した導入を推奨している。
ハヤカワさんは「生成AI関連の業界は男性が9割以上を占めている」と指摘。生成AI業界における女性の少なさは大きな課題という。しかし、この状況は新規参入のチャンスでもあると続け、生成AIを女性のキャリア継続の切り札として捉えていると明かす。
25年に30歳を迎え、出産・育児というライフイベントを意識し始めている今、ハヤカワさんは「私が出産するまでに、完全に私の代わりに働いてくれる仕組みをAIで作りたい」と語る。生成AIで作った画像を交えながらSNSでの情報発信を続け、オンライン上での存在感を維持する実験を始めている。
「出産しても、インターネット上の私は変わらない。私が気付かれないまま出産するのが今の個人的なミッション」と笑いながらも真剣に語る。
マスクドさんも「こういったAIの活用は、むしろ女性にこそ使ってほしい」と賛同。生成AIが自身の分身として機能することで、従来の働き方の制約を超え、より柔軟なキャリア形成が可能になるという期待だ。
このような状況から、25年は「パーソナルアシスタントの時代が来る」とハヤカワさんは予測する。Google HomeやスマートフォンなどのデバイスにGeminiのような生成AIが搭載されていくことで、各デバイスがより賢く使いやすくなるのではと話す。
マスクドさんはより具体的な予測として「ハンディスキャナーのような手軽に使えるハードウェアとの連携が進み、自分の仕事の様子を監視し続けてデータを収集し、改善提案をしてくれるようになる」と語る。
この変化に備え、ハヤカワさんは「ハヤカワ七味ちゃん」というAITuberを展開し、パーソナルアシスタントのキャラクター化を試みている。「将来的には、パーソナルアシスタントの人格を選べるようになると思う。例えばピカチュウと会話したいならピカチュウのライセンスを買う、といった具合に。そのストアに七味ちゃんを並べたい」と話す。
変化は急速に進むが、「生成AIを早いうちに使っているだけで先行者利益があると思う。まだYouTubeでのヒカキン側になれる。早くやった人側になれる」と初期参入者の優位性を説くハヤカワさん。プラットフォーム黎明期からの参入者が大きな影響力を持つように、生成AIの活用でも早期参入のメリットは大きいのではと説明した。
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