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「AIにオールイン」決めたDeNA南場会長 注目の経営判断、背景は【講演全文】(2/5 ページ)

» 2025年02月13日 17時00分 公開
[吉川大貴ITmedia]

AIの喧騒に「すごく感動」 南場会長が見る景色

 10人でユニコーンは現実か、ということなんですが、これは現実です。

 西海岸の、とあるソフトウェアを作っているスタートアップのCEO──朝起きて一つのtodoリストを「Devin」にアサインして、途中で軌道修正して、(タスクが)随分楽になったという話がありますけども、この方の会社は、7人で3000億円のバリエーションをつけている堂々たるユニコーンに成長しています。

 種明かしをすると、この方はスコット・ウーでCognition AI、すなわちDevinを作っている会社なので、それは“Devin使い”は上手だろうなということなんですけども。

 実際に西海岸に行って起業家の話を聞くとですね、少しエンジニアリングのバックグラウンドがあれば、「Cursor」などを用いて、だいぶプロダクトができますよということで、 採用人数も一般論ですけども減っているし、 それからベンチャーキャピタルに話を聞いても、最近の資金調達のアーリーステージのロット、小さくなっているねという話と、あるいは調達した資金のラウンドが伸びているよというような話も聞きます。

 一人で10人分の仕事ができる時代になっているということで、 私のようなものもすごく感動しています。

 ただ懸念は、日米のギャップです。西海岸と東京、行ったり来たりしているものですから、どうしてもギャップを感じてしまうんです。西海岸ですと、本当に息を吸うように、学生もスタッフもそしてベンチャーキャピタルも全て、AIのツールを使いこなしています。

 かつ、週単位でアップデートされるファウンデーションモデルについての情報交換、あるいは新しいツールに関する情報交換、もうすさまじい喧騒です。そして公表されていない未来をも読もうとしています。

 私の友人なんか「聞け智子、NVIDIAの35歳を採用するんだ」という話をしています。これは、NVIDIAがどういう未来を描いているのか、35歳の中核人材を雇うことによって、人よりも早く知りたいということなんですよね。実際に人材の流動とともに情報が流通している。

 「ノーレッジスピルオーバー」(知識の流出)なんていう言葉を使いますが、 そんなことも起きていて、すさまじい喧騒です。スタートアップだけではなく、ビジネスマンでAIの可能性に興奮していない人はいないというところです。

 しかし日本に帰ってくると、そういう(AIに敏感な)人もいますが、割合が少なくて、ちょっと危機感を感じますね。特に大企業の経営者の集まり、割合が少ないです。

 そしてAIの話題が上るときは、どちらかというとリスクの話が多いのかなという感じがしています。もちろん経営者、日本の経営者もしっかり勉強して、今AIちゃんと勉強しなきゃ、生産性アップに使わなきゃということで、現場にこれを用いてどう生産性を劇的に改善できるか、提案してなんていうことを言っている経営者も見られるところはありますが。

 私は現場からの改革に関しては、限界があるのかなと思っています。やはり劇的な生産性の向上、AIを中心に業務を組み替えるということが必要になります。これは結構大ごとです。

 そして場合によっては、一般論ですけれども、人員削減につながることもあるし、人材の入れ替えを必要とすることも出てきます。また短期的にはコストが上がることもあります。基本的には痛みを伴う改革である、それだけドラスティックな改革であるということなんです。

 これはやはりトップですね。トップが引っ張らなきゃいけないんじゃないでしょうか。しかもこれが大事だからやってねというのではなく、 自らがツールを使い倒して、この可能性に感激して興奮して、そしてその興奮を改革のエネルギーに変えて、全社を引っ張っていくことが必要になると思っています。

 ですから経営者自身が興奮しているというのは非常に重要なことであると思います。ただ私は日本の心配する立場ではありませんので、 まずDeNAが何をするのかということをお話ししたいと思います。

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