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「AIにオールイン」決めたDeNA南場会長 注目の経営判断、背景は【講演全文】(3/5 ページ)

» 2025年02月13日 17時00分 公開
[吉川大貴ITmedia]

「DeNAはAIにオールインします」

 DeNAはAIにオールインします。経営のAIシフト。まず徹底的に生成AIを用いて生産性の向上に取り組みます。現在の事業は大体3000人で運営しています。これを、非常にモデストな目標ですけれども、半分で現状維持じゃなくて、半分の人員で現業を成長させていきます。

 そして(もう)半分で何をするかというと、新規事業をやっていきます。一つの新規事業ではなく、10人1組でどんどんやっていくという、 もうクレイジーにやっていきますよということで、10人1組でユニコーンを量産するというようなイメージで攻めていきたいと思います。

 どの領域というとやはりAIです。これは、生成AIの産業構造を確認してみた図(画像3参照)です。一番下がチップですね。その上がコンピューティングインフラ。そして真ん中にファウンデーションモデル。そしてその上に開発ツール、一番上がアプリケーションモデルです。

photo 生成AIの産業構造(画像3)

 私たちはこのアプリケーションレイヤーを狙っていきます。アプリケーションレイヤーよりも下のレイヤーは、 おそらくファウンデーションモデルを中心とした縦統合の陣営の競争が繰り広げられると思います。その結果としてコモディティ化する可能性もあります。今、兆円単位の投資をして、そしてファンデーションモデルを開発しているプレイヤーを中心に縦統合をやっている。

 その人たちがアプリケーションレイヤーを攻めてこないかというと、そんなことはないです。おそらく非常に汎用性の広い、すぐに収益化するアプリケーションに関しては、この縦統合の巨人たちも参入してくるでしょう。

 しかし彼らが全てのニーズを満たす、全てのアプリケーションを展開するということはないというふうに思います。彼らにとってもエコシステムの繁栄が戦略的に目的となってくるはずです。

 そしてこのアプリケーションレイヤーの最大の強みは、 エンドユーザーに直接触れる、エンドユーザーのニーズケースやニーズを直接受け止められる唯一のレイヤーです。このニーズを直接受け止めて、そしてそれを付加価値に変えていくというのがこのアプリケーションレイヤーの強みですね。

 AIを用いた世界の改革というのはこれから長く続きます。で、その続く変化にきめ細かく、寄り添いながらどんどん付加価値を追求していくことができるのがこのレイヤーですね。しかも数多くの強いニーズに基づくビジネスチャンスが現れてくるといに思います。そのレイヤーをDeNAは狙って集中して攻めていきたいなと。

 まずB向けはどうなのかというと、B向けはバーティカルAIエージェントにフォーカスしていきます。少し前、半年前までは、何十兆円と生成AIに投資されたのに売上は全然見えてこないねなんていう話がされていたんですが、 最近は売上が見えてきました。

 特にエンタープライズ向け、B向けの事業で少しずつ売上が立ち始めています。Y Combinatorの最終バッチも、8割が実にAIなんですが、そのうちの7割がエンタープライズ向けのプロジェクトになっていますね。

 その中でもAIエージェントのプロジェクトというのは結構出始めています。ここに出ているのはY CombinatorのAIエージェントのプロジェクトです。マーケティングとかリーガルとかプロダクティビティとかセキュリティとかという機能別に整理していますが、機能×業界あるいは業務という本当にたくさんのきめ細かなニーズが発生しています。

 そして強いニーズに届くビジネスチャンスであるということ。そこはDeNAが攻めていきたい。特に、DeNAが強みを持つスポーツ、それからスポーツの運営施設、そしてヘルスケアとかメディカルは、当社の業務知識の強みがあります。

 そしてこの事業運営の中で培ったアセットがあります。それらを活用して、まず近い領域からバーティカルAIエージェントビジネスを立ち上げていこうと思います。遠い領域に関しては他社さんの作ったものをM&Aするなどを検討するといったようなことを考えています。

 C向けはどうかというと、AIエージェントも面白いと思うんですが、私たちはここに関しては没入観(を重視する)というか、エンタメやコミュニティー、孤独の解消であるとか、あるいはちょっとしたゲームとか、そういったところを攻めてみたいなと。

 こういう領域に関しては西海岸だけ、アメリカだけ見ていてもダメで、中国が面白いです。今一生懸命勉強してますけれども、われわれ独自の活動で面白いサービスを展開できるんじゃないのかなと思っております。

スタートアップ支援やM&Aも加速

 さてたくさんの新規授業を立ち上げるよと10人1組でユニコーンを全部狙うんだというお話をしましたがわが社の中だけでやるつもりは全くないです。

 (南場会長が立ち上げた)Delight Venturesで、その他のVCと連携して、まずM&Aを活発化したいと思います。もう目を皿のようにしてAIのスタートアップを探していきます。そしてここ行けそうだなと思うところをどんどんM&Aしていきたいと思います。

 そして全部自社で抱え込むんじゃなくて独立も支援したいです。ゼロイチで立ち上がった事業、あるいはわが社が1→10や10→100をサポートした事業も、本人たちが希望するなら、どんどん独立してもらう。それを全力で支援します。

 われわれ今までも、例えばタクシーのGOや、AIのALGO ARTISなど、当社の中で01をやって、しかし外に出した方が成長するねというものは外に出している。まだまだ株主としては残っていますが、IPOを狙って頑張っていると。

 そういうスタートアップエコシステムも活用して事業を活性化させるということ。全部わが社の中で囲い込まないという考え方で運営をしていますので、Delight(の価値を)を最大化する場所に置きに行くということをやります。

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