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「AIにオールイン」決めたDeNA南場会長 注目の経営判断、背景は【講演全文】(4/5 ページ)

» 2025年02月13日 17時00分 公開
[吉川大貴ITmedia]

「大げさではなく第2の創業」 DeNAにおけるAIシフト

 さて、私たちが経営のAIシフト、すなわち効率アップと、新規事業の量産という話をしましたけど、この変化の方針についてちょっと考えてみたいなと思います。

 経営のAIシフトに関していうと、実は2021年に当社が完了したクラウドシフトに重なるところが大きくなっています。

 21年にクラウドシフトって、ちょっと遅いかなって感じる方もいるかもしれないんですが、実際われわれは最初にクラウドに飛びついてはいません。なぜかというと私たちの巨大なオンプレのシステムは、超腕利きのインフラのエンジニアがカリッカリにチューニングをしてクラウドの半分のコストで運営していました。

 しかも本当に巨大なシステムで1日、今でしたら120億ぐらいのリクエストがありますが、当時でも50億以上のリクエストがありました。かつ、リアルタイム性が重要なゲームからセキュリティ命のヘルスケアまで多岐にわたる300ぐらいのシステムがあり、それらをインフラ起因の障害ゼロで、さっき言ったようにコスト半分で運営していたので、クラウドシフトは本当に覚悟がいる決断でした。

 けれども持ち前の技術力で工夫をしてクラウドを使い倒して、コストも含めQCD(品質、コスト、納期)合格点となりました。けれどもそのQCD以上に、私がこのシフトの本質だと思っているのはエンジニアの人たちが想像的な仕事にフォーカスできるようになったということです。

 特にインフラエンジニア、やはり何かあったらデータセンターに駆け付けるとか、ラックだとか配電だとか、サーバの御守りで大変だったんですね。それらから解放され、創造的な仕事、経営にとって重要な仕事にフォーカスすることができるようになった。これが最大の収穫でした。

 クラウドシフトはそれがエンジニアだけだったんですが、AIシフトは全社員にいえると思うんです。全社員が指示通りにやる仕事からどんどん解放されて、創造的な仕事にフォーカスされる。そういうことができるのが、AIシフトの一番の本質かなと思っています。

 また事業に関してはどうでしょうか。見えている未来と現状のギャップですね。数年後、全産業にAIエージェントとか行き渡るのは、確かな未来だと思うんです。例えば薬局。5年後10年後、AIエージェントのパワーを必ず活用しています。

 ところが今、薬局はどうでしょうか。AIエージェントの力を活用している薬局はありますかというと、ほとんどまだないという状態。全普及がほぼほぼ未来として確定されているのに今ほとんどないというこのギャップ。これはいつかの何かに似てないでしょうか

 そうです、1990年代後半のインターネットです。この時代、1999年にDeNAは誕生しました。そして最初からうまくいったわけではありません、いろいろとすったものがありました。でも、確かな未来があるんだからということでこの波に飛び込んだことによってDeNAはここまで成長することができました。それと同じことをAIについてもやろうと思っています。

 これはまさに大げさではなく第2の創業、チャプター2が始まるということだと。そしてこのチャプター2を扉を開けるに当たって忘れてはいけないことがあると思います。

 コンピュータがどんどん人間に近づいている中で“本当の人間の営み”に対する渇望というのはどんどん高まってくるだろうと思われます。例えばスポーツは典型ですね。やはり人間らしさ、そして人々の感動というものに対するセンシティビティはこの時代ますます重要になっていくと思います。このことを忘れずに第2の創業をやっていかなければいけないと思います。

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