文部科学省の中原裕彦文部科学戦略官は4月16日の衆議院内閣委員会で、SNSで物議を醸している「ジブリフィケーション」(ジブリ化)に関する質問に対し、個別の事例については最終的には司法の判断になるとしつつ「(著作権法においては)単に作風・アイデアが類似しているのみであれば、著作権侵害に当たらない」との見解を述べた。
立憲民主党の今井雅人議員による「いわゆるジブリフィケーションが、著作権侵害に当たるのではないか。現在の解釈ではどこまでが適法でどこからが違法と理解すべきか」という質問に答えた。以下、中原戦略官の回答全文。
著作権法におきましては、思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術、または音楽の範囲に属するものを著作物として保護しており、創作的な表現に至らないいわゆる作風やアイデアというものを保護するものではないことから、単に、アイデアが類似しているのみであれば、著作権侵害には当たらないとされております。
他方、AIにより生成されたコンテンツに、既存の著作物との類似性及び、依拠性が認められれば著作権侵害となり得るということでございます。
個々の生成物がその既存の著作物の著作権侵害に当たるか否かにつきましては、最終的にはその個別具体的な事例に即しまして、司法の場で判断されることとなりますけれども、文化庁におきましてはこうした点も含め、AIと著作権の関係について、令和6年3月に「AIと著作権に関する考え方について」を取りまとめまして、セミナーなどを通じまして、これらの考え方のその周知啓発に勤めてきたところでございます。
今後もこうした考え方について正しくご理解いただけますよう、分かりやすい形でその周知啓発を行ってまいりたいと存じます。
回答を受け今井議員は「作風やアイデアの間は大丈夫、合法だが、ジブリそのものという風に認定されてしまうと法律違反という整理だということが分かりました」と答えた。
16日の内閣委員会では、人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律案がが議題に。参考人として東京大学の松尾豊教授や、東京都のAIアドバイザーに就任した安野貴博さん、さくらインターネット田中邦裕社長などが参加。AIに関する国際情勢について説明した他、ディープフェイク対策や安全保障上の課題、知的財産保護について話し合われた。
ジブリフィケーションは、米OpenAIのChatGPTに新たな画像生成AI機能が搭載されたことで広がった。自分の写真などをジブリ風に変換することがSNS上で流行したが、権利侵害の可能性を含め嫌悪感を示す人も多数見られた。一方「AIと著作権に関する考え方について」などを基に、キャラクターをまねた画像を生成するのは違法なものの、作風のみであれば適法とする指摘もあった。
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