「個人情報を汎用生成AIに入力していると誤解されかねない編集内容に私達も困惑しているところです」――東小金井小児神経・脳神経内科クリニック(東京都小金井市)は4月18日、こんな声明を公式サイトで発表した。同院を巡っては、患者の情報を入力するだけで自動でカルテを作れる「AIカルテ」を導入したとして、東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)が報道。映像内のAIの利用法に問題があるのでは、とSNSなどで物議を醸していた。
問題となったのは、TOKYO MXが16日までに報じた内容で、同院がAIカルテの導入により、業務時間の削減に成功したというもの。「『AIカルテ』導入で医師の時間外労働ゼロ 〜医師の働き方改革〜」というタイトルで、YouTubeの映像とともにTOKYO MXの公式Webメディアなどにテキスト記事も掲載。映像には、患者の病歴などの情報を、米AnthropicのチャットAI「Claude」に入力し、カルテを作成しているように見える院長の姿が映っていた。
これに対し、Xなどでは「Claudeに患者個人情報ダイレクト入力はダメでしょ」「病院とAIカルテ提供企業で情報の利用禁止など、きちんと契約して使ってるのだろうか」など指摘が相次いだ。情報が流出した際の被害や、法に触れる可能性を懸念する声も上がるなど、波紋を広げていた。
そんななか、東小金井小児神経・脳神経内科クリニックは、同院に寄せられたという「クローズドAIではないAIを医療に使うのは問題ではないのですか?」との意見に回答する形で、報道に対する声明を発表した。同院は「取材時にデモンストレーションとして示した、ダミー患者の情報を汎用生成AIに入力して情報をまとめる動作が映像として放送されていたが、当院では個人情報を汎用生成AIに入力することは一切していない」と表明した。
また報道の仕方にも問題があると指摘。「医療現場(特に多くの医師が働く大きな規模の病院)において汎用生成AIを使用することの危険性について取材時に語った内容に関しては正しく報道されておらず、個人情報を汎用生成AIに入力していると誤解されかねない編集内容に私達も困惑している」と明かした。
なお、医療AIサービスの普及のため研究開発を行う団体「医療AIプラットフォーム技術研究組合」の資料によると、「(生成AIの)入力データが再学習に利用される設定となっている場合に個人情報を入力すると、第三者提供となるため、本人の同意を得ずに医療情報などの個人情報を入力してしまうと個人情報保護法への違反となる」という。また医療情報を取り扱う場合でも「生成AIのサーバなどが、国内法の適用を受ける場所に設置されていること」などの要件を満たす必要があるとしている。
TOKYO MXは21日、問題となった映像について「視聴者の皆さまに誤解を招きかねない表現があった」として、訂正したと明かした。詳細はこちらの記事まで。
【追記履歴:2025年4月22日午前10時】TOKYO MXからの返答を追記しました。
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