自尊心が低い人は「AIに安心を求めやすい」――早稲田大学の研究チームは5月27日、人とAIの関係において、こんな特徴が見られるとの研究結果を発表した。生成AIの利用が活発になる中、人とAIの関係に注目が集まっている。この実験では、人が人に愛着を求めるように、AIにも愛着を求めるのかを探った。
今回の研究では、生成AIを日常的に利用している中国の若者を対象に、3回にわたってWebでの調査を実施。1回目の調査では56人が参加し、2回目では63人、3回目では242人、合計361人の回答を分析した。
1回目の調査の参加者56人に対し、生成AIの印象や利用方法について聞いた。その結果、約75%が「AIに助言を求めたい」と感じ、約39%が「いつでも頼れる存在だ」と思っていると回答した。
2回目の調査では、人とAIの関係に関する新しい尺度を作成し、63人を対象にAIに対して人が抱く気持ちの傾向を計測した。その結果「もっとAIから気持ちに寄り添ってほしい」と思う傾向や、反対に「AIにはあまり自分のことを見せたくない」といった傾向が明らかになったという。
さらに追加で242人を対象に、AIに対して抱く気持ちが他の心理的な特徴とどう関係するのか調べた。すると「自尊心が低い人はAIに安心を求めやすい」「AIに良い印象を持っている人は(AIと)距離を取りにくい」といった傾向が明らかになった。
この結果に対し、研究チームは「AIとのやりとりの中にも、人との関係に似た“心の距離感”のようなものがあることが見えてきた」と説明。人が不安やストレスを感じたときに安心感を求める心の仕組みを説明する「愛着理論」が、人とAIの関係にも当てはまる可能性があるという。
一方で、研究チームは「今回の研究は『AIとの関係に、人間関係と似た心のパターンが見られるか』を検討したものであり、実際に人とAIの間に深い絆ができている、ということを意味するわけではない」と補足。また「今回の調査は主に中国の若者361人を対象としたもので、サンプルの数や年齢・文化の偏りがある点に注意が必要」とも指摘する。
今回の研究は、早稲田大学の小塩真司教授らの研究チームが実施した。研究成果は、心理学に関する論文を扱う学術誌「Current Psychology」に5月9日付で掲載された。
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