「『AIを使うことが悪』という印象を作ってしまっては、現代のデジタルテクノロジーの発展は大きく遅れることになりかねない」──レベルファイブの日野晃博社長は12月26日、自身のXアカウントで、生成AIに対する見方を示した。同社がゲーム開発に生成AIを活用しており、それを公表していることが物議を醸しているとして、自身の考え方を明らかにした。
ゲーム開発における生成AI活用は「クリエイターを軽視している」などとして、消費者からの反発を招くことも少なくない。しかし日野社長は「多くのゲームメーカーが、ゲーム開発にAIを取り入れた効率化をやっていると思う。それを外に公表しているかどうかの違い」とし、すでに業界に生成AIが浸透しているとの見方を示した。
日野社長は「AIを使って、ばかにできない時間短縮ができているというのも事実で、これはゲーム開発の常識を覆す可能性があると思う。みんなが遊びたいAAAゲームの開発に5年〜10年かかる状況から、2年に1度遊べる世界が来るかもしれない」と生成AIの可能性に言及。「AIを使うことが悪」という風潮がテクノロジーの発展に悪影響を及ぼす可能性があるとした。
レベルファイブにおけるAIの活用状況にも言及。SNS上などで見られる「同社は、80%〜90%のプログラムコードをAIに書かせている」とのうわさに触れ、誤りだと否定した。
「AIをテーマにした未発表のタイトルがあり、そのタイトルに関しては、あえてプログラムもAIでつくっていると語ったプログラマーがいる。その例を出して、これからはそんな時代が来るのかも、という話をしたのが膨らんだ。逆に80%〜90%のコードをAIで作成し、ゲームがつくれているのであれば、AI界隈の人達から引っ張りだこになってしまう」という。
レベルファイブは2023年に生成AIの活用事例を公表。ゲーム「メガトン級ムサシW」の開発で、タイトル画面のレイアウトを検討するに当たって画像生成AI「Stable Diffusion」を利用した他、「イナズマイレブン」シリーズでは、大観衆や建物群の背景素材をAIで作成したという。
国内では他にもセガ、コロプラ、Cygames、カプコンなどが活用事例を明らかにしており、ゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC」でも複数のセッションが行われるなど、生成AIの活用や研究が進みつつある。
一方、消費者側はそれを完全に受け入れているわけではない。直近では、海外のインディーゲームアワード「Indie Game Award」に入賞した人気ゲームが、規約に反して生成AIを使っていたことが発覚。一度受賞した賞を取り消され、日本のゲーマー間でも話題になった。
日野社長の投稿に対しても「プログラムはどんどんAIに書かせるべき」など同調する反応もあれば「クリエイター搾取の言い訳に過ぎない」などと否定的な見方も見られ、意見が割れている状況だ。
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