国内ゲーム大手各社が、生成AIの活用を続々と公表し始めている。大規模言語モデル(LLM)活用を中心とした導入事例が次々と明らかになっており、7月22日〜24日にかけてパシフィコ横浜で開催されたゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC2025」でもAI関係のセッションが目立った。各社による活用の現在地は。
CEDEC2025では、セガやCygames、カプコンなどが生成AIに関する講演を実施。例えばセガは、社内におけるAI活用の環境整備について講演した。さらに、ChatGPTのようなクラウド上で動作するAIだけでなく、手元のPCで動く「ローカルAI」の活用を進めていることも明らかに。オンラインゲームのプレイヤーによる不適切な発言のチェックなどに活用しているという。
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Cygamesは少なくとも2024年時点で生成AIの活用を明らかにしており、社内用AIチャット「Taurus」などを内製・利用している他、画像・動画生成AIの研究なども進めている。CEDEC2025では最新の活用状況について講演し、ファンのSNS投稿を生成AIで分析する取り組みなどを明らかにした。
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同社によるセッションの一つでは、講演者が来場者に「生成AIを使っている人はどれくらいいるか」と挙手を求める一幕も。セッション会場には百数十名程度が来場していたが、ほとんどが手を挙げていた。
カプコンは、ゲームステージに登場するポスターやステッカー制作のアイデア出しに米GoogleのLLM「Gemini」や画像生成AI「Imagen 2」を使っている。CEDEC2025でも「モンスターハンターワイルズ」を題材に、一度の命令内容を達成するために複数のアクションを自律的に組み立てて実行するようなAI「AIエージェント」の活用について講演した。
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CEDEC2025では、スマートフォンゲーム「ヘブンバーンズレッド」を手掛けるWFS(東京都港区)や、バンダイナムコホールディングス子会社のバンダイナムコエクスペリエンスも、生成AIの活用事例について講演した。
この他、レベルファイブは23年、他者に先駆けて画像生成AIの活用事例を公開。スクウェア・エニックスも米Microsoftの公式サイトから、LLMを活用した社内チャットなどを導入していることが分かっている。
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一方で、社内の業務効率化にとどまらず、ゲームそのものに生成AIを組み込む企業も出てきている。コロプラは24年12月、画像生成スタートアップの英Stability AIとのパートナーシップを発表。25年5月には、画像生成AIが作ったカードが使えるゲーム「神魔狩りのツクヨミ」(じんまがりのつくよみ)をリリースした。
同作は「真・女神転生」「ペルソナ」シリーズに携わってきたゲームクリエイターでイラストレーターの金子一馬さん風のイラストをAIで作成する仕組み「AIカネコ」を特徴とするダンジョン探索型カードゲーム。生成したカードのうち、プレイヤー投票などで選ばれたものは、リファインの上で公式が採用するなど、コミュニティーを巻き込んだゲームシステムを備えている。
同社はダウンロード数やユーザー規模を明らかにしていないが、App Storeでの評判は星4.7(レビュー数約7200件)、Google Playでは星4.5(レビュー約7600件、ダウンロード数は5万超)。一方でSteamのユーザー評価は「賛否両論」(レビュー数は約200。いずれも7月時点)と、スマートフォンで遊ぶプレイヤーからは一定の評価を得ている様子だ。
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生成AIの活用は、インディーゲームや同人ゲームでも散見される。例えば同人サークル「上海アリス幻樂団」が手掛ける「東方Project」シリーズの新作「東方錦上京 Fossilized Wonders.」は、背景画像に米Adobeの画像生成AI「Adobe Firefly」を活用している。
PCゲーム販売プラットフォーム「Steam」でも、画像やテクスチャにおけるAIの活用を明記しているゲームは少なからずあり、国内外を問わずさまざまなゲームで注意書きが見られる。ただし中には、AIを使って粗製乱造したとみられる、低クオリティーな作品もちらほら。同様のゲームはSteamだけでなく「ニンテンドーeショップ」といったストアでも見られ、しばしばSNSで物議を醸している。
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