生成AIを巡っては、文章や画像など、形を問わず自身のデータが同意なく学習されることをフリーライドと捉えて嫌う人も多く、AI活用の公表がSNS上での“炎上”につながる例も散見される。
ゲーム業界でも同様で、一時はAI活用の公表に積極的な企業とそうでない企業で分かれていた。実際、記者が取材していた限りでは、24年半ばごろまでは「水面下で研究はしているが、広報戦略などの観点から公にはしない」といった声が業界関係者から聞こえていた。
一方で24年後半ごろからは、各社による活用事例の公表が増えている。CEDECでも開発者向けとはいえ生成AIの利用を公表するケースが多く見られ、潮目が変わりつつありそうだ。著名なIPを持つゲーム各社によるAI活用は、世論を動かすきっかけになっていく可能性もある。
ただ、海外では違った動きも見られる。例えば「PUBG:BATTLEGROUNDS」などを手掛ける韓国ゲーム企業のKRAFTONは25年5月、ライフシミュレーションゲーム「inZOI」で活用している画像生成AIについて「商用利用が許可された公開画像をもとに学習したもの」と明らかにした。
同社は「商用利用が許可されたデータセットの慎重な選定と使用」といった原則を順守して開発していると強調。声明を出した背景については「コミュニティーを中心にinZOIで使用されている生成型AI技術への関心とさまざまな議論が高まっている」と説明した。同作の生成AI機能については、海外掲示板サイト「Reddit」などで学習データの透明性を求める声が出ており、実質的に配慮したとみられる。
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とはいえ、大規模化の進むゲーム開発において、生成AIの活用は進んでいく公算が大きい。「星のカービィ」シリーズなどの生みの親であるゲームクリエイター・桜井政博さんは、ゲーム開発の効率化について問うメディアの取材に対し「生成AIを活用することで作業効率を上げるなど、スキームを変えていかなければならない段階に来ている」と答えている。
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専門化・細分化の進むゲーム開発、進化するAI技術へのキャッチアップと活用、ファンコミュニティーへの適切な情報発信、AIを使った高品質なゲーム作り……生成AIを巡り、ゲーム企業が取り組むべき課題は多く、それぞれのさじ加減も簡単ではない。果たして各社の取り組みは、良質なゲーム体験の創出につながっていくだろうか。
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