そもそも、人が「自分で考える」のはどんな時でしょうか? 誰かに答えを教えてもらおうとするのではなく、「自分で考えざるを得なくなる」のはどんな時でしょう?
個人的な体験をいうと、わたしの場合それは「外部から理不尽な要求をされた時」でした。これはどう考えてもおかしい、自分がそんな要求に応じなければいけない理由はないはずだ……と感じた時に、その自分の主張を認めさせるための方法を考えなければいけなくなりました。ちなみにわたしはその時「先生に答えを教えてもらう」わけにはいきませんでした。なにしろ戦った相手が中学の担任教師だったので(笑)。まあこれは極端な例ですが、大事なのは、
あれ? 変だな? おかしいな?
という「疑問」です。疑問を持ったとき、人は考え始めます。そして、考えるためには「手がかり」が必要です。しかも「手がかり」にも過不足があるのが普通で、実際に現場で何かの問題を解決するために考えるときには、役に立たない手がかりが大量にある一方で、本当に役に立つ手がかりは不足しているという事態がよく起こります。
そんな現場で「使い物になる」人材を育てるためには、研修の場でもそれに近い状況を作らなければなりません。つまり、役に立たない手がかりの中に、役に立つ手がかりをカムフラージュして与えるような情報提供をして考えさせる必要があります。
これは、「分かりやすい説明」とは真逆のやり方ですね。なにしろ、わざわざ分かりにくくしているんですから。「分かりやすい説明」が「考えさせる」上で障害になってしまう場合さえあるというのはこれが理由です。
ティーチングとプレゼンテーションは違います。
プロフェッショナル人材を育てるためには、受講者が「必死に考えてようやく分かる」ような研修をしなければなりません。しかし、そのためには教材づくりから工夫しなければなりません。プレゼンテーションのための資料作りとは違うノウハウが必要なのです。それをしなければ、受講者がとことん頭を振り絞って考えて、心地よい満足感を味わい、現場でもやってみようという意欲と、やれそうな手応えを得られる研修はできません。
ところが現実にはこのためのノウハウがまだあまり知られていないようです。それを知らないと、例えば下記のような極めてよくある「知識伝達型の研修」をやってしまいがちです。
こんなパターンで新入社員研修をしている会社が多いのではないでしょうか? これがすべてダメなわけではありませんが、こうした「単なる知識伝達型」だけでは、受講者に「必死に考えさせる」ことができないため、なかなか「現場で使える力」は習得させられません。
ではどうすれば良いのか? その答えを次回に掲載しますのでお楽しみに!
今回取り上げた「受講者に考えさせるための教材づくり」をテーマとする公開セミナーを開催します。会社特有の専門分野に関する社員教育にお悩みの方はぜひご参加ください。
また、文中にも登場する Six Stars Consulting主催のプログラム紹介セミナーにも登場します。
新入社員研修を企画・運営する実施責任のある方、ご担当者様の参加をお待ちしております。
IT技術者の業務経験を通して「読解力・図解力」スキルの再教育の必要性を認識し、2003年からその著述・教育業務を開始。2008年は、「専門知識を教える技術」をメインテーマにして研修・コンサルティングを実施中。近著に『ITの専門知識を素人に教える技』、
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