幕末でも高度成長期でもあるまいし、「志」なんて古いのではないか? 「志」というものは、一部の人だけが持つもので全員が持つものではないのではないか? そのように感じられる人もいるのではないだろうか。
私は、今の時代だからこそ、「志」が大切で、誰もが持っているものだと考えている。今の時代は、一言でいえば「多様化」の時代である。高度成長期は、全員が同じ方向を見て、言われたとおりに行動していれば良かった時代である。これからは、自分の人生に対して、誰も明確な方向性を決めてくれない。多様化の時代とは「自分で決めて、自分の目指す方向に進む」時代なのである。
そして、誰もが、人と違う自分らしさを持っており、誰もが、社会や人に対して貢献することができる力を持っている。影響力の大きさは、人によって違う。社会に大きな影響を与える人もいれば、職場のメンバーに影響を与える人もいる。影響力の大きさは問題ではなく、その人が、自分の人生の主体者として生きているかどうかが重要なのだ。
では、どうすれば「志」を持つことができるのだろうか? その一歩は「ありたい姿」を描くことである。自分自身のありたい姿や、チームや職場のありたい姿を描いてみることだ。「ありたい姿」を描くためには、問題と感じていることを洗い出すことから始めるとよい。自分が扱うべき最も重要だと思う問題に焦点を当て、その問題意識に関する理想の姿・状態を「ありたい姿」として考えてみると良い。
私の場合は、「意志を持たない日本人が増えてきている」という問題意識があるからこそ、「志を持っている社会人が30%を超える世の中」をありたい姿として描いている。
職場で元気がない人が多いことに対する問題意識でも、職場の情報交換が行われていないことに対する問題意識でも、日本の製造業が世界の競争に負けていくことに対する問題意識でもいい。問題意識を1つに絞り、なぜ、その問題意識を取り上げているのか、どのような状態を理想の状態と考えているのかを考えることである。問題意識の背景には、自分の価値観が隠れている。その問題意識を研ぎ澄ます中で、あなたの志が見えてくる。皆さんにおうかがいしたい。
「あなたの志は何ですか?」
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