医師からうつと言われたときからうつになった仕事に負けない、頭と心の整理術(2/2 ページ)

» 2013年06月11日 10時45分 公開
[竹内義晴,Business Media 誠]
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「結果」への対応ではなく、「原因」への対応を

 メンタルヘルスやモチベーションと言えば、最近よく耳にするのがうつ病です。

 平成24年度版自殺対策白書によれば、日本の自殺者は平成23年まで14年連続で年間3万人を超えているそうです。平成24年は3万人を下回ったそうですが、自殺の原因の1つに、メンタルヘルスの課題が挙げられています。

 厚生労働省は2010年、自殺者を防ぐために職場の健康診断で精神疾患調査を義務化する検討を始めました。結果的には、精神疾病への誤解や偏見を招きかねないこと、検査費用がかかるなどの理由で見送りになったようですが、誤解を恐れずに正直にお話しすれば――私は精神疾患調査の義務化を危惧していたので、この結果を知って安心しました。なぜなら、職場の健康診断でうつ病の調査が義務化されたら、うつ病になる人を増やしてしまうと考えていたからです。

 私の知人に、「医師からうつと言われたときからうつになった」というSさんがいます。

 仕事のストレスが続き、体調不良で病院に行ったそうです。診断の結果、医師から「何でもない」と告げられたものの、処方箋が出されます。何でもないのに薬が出されたことに疑問を持ったSさんは、医師に何の薬かを尋ねたところ「うつの薬だ」と伝えられます。それから3年、やる気が出ず、体型も変わり、薬を飲んでも改善せずにしんどい毎日が続いたそうです。

 厚生労働省の「労働安全衛生法の一部を改正する法律案の概要」という資料によれば、職場の健康診断で精神疾患調査が義務化される際、医師・保健師がメンタルチェックする内容の例として、「ひどく疲れた」「不安だ」「ゆううつだ」などの項目が挙げられています。このような症状は、レベルの差こそあれ、仕事をしていれば誰もが抱くものです。

 実は、私にも仕事に負けそうな時期がありました。残業が続く毎日、上司や顧客からのプレッシャーやストレスで十二指腸潰瘍になり、夜、布団に入ると自然と涙が出てきて、空を自由に飛ぶ鳥を見て「うらやましいなあ」と思っていた当時の私なら、多くのチェック項目で「イエス」と答えたでしょう。

 歯を健康に保つためには、定期的な健診よりも歯を磨くことが大切なように、メンタルケアで大切なのは、うつに「なった後」(結果)ではなく、「なる前」(原因)への対応のはずです。うつになったことを健康診断で判断することよりも、その前に、職場で自分でできることがあると思うのです。

 うつになるほど悩みを抱える前に、職場の中に話せる環境がある。自分を無理に追い込んでしまう前に、自分自身とうまく対話できる……。メンタルケアには職場や自分自身とのコミュニケーションが大事なのではないかと思います。

 (次回、「コミュニケーションには2種類ある」)

竹内義晴(たけうち ・よしはる)

 1971年生まれ。経営者、教師、コンサルタント、コーチ、カウンセラーなど、リーダー層を支えるビジネスコーチ。人材育成コンサルタント。

 自身がプレッシャーの多い職場で精神的に追い込まれる中、リーダーを任される。人や組織を育てるには、マネジメントの手法だけでは太刀打ちできないことを痛感。優れたリーダーたちが使う卓越したコミュニケーションスキルを学び、実践。チームの変革に成功する。実践の経験から、難しいコミュニケーションスキルを誰もが現場ですぐに使えるようにした独自の手法「トライアングルコミュニケーションモデル」を考案。実践的なコミュニケーション方法を伝えるコミュニケーショントレーナー。

 米国NLP協会認定NLPトレーナー、NPO法人しごとのみらい理事長。著書に『「職場がツライ」を変える会話のチカラ』(こう書房)、『イラッとしたときのあたまとこころの整理術―仕事に負けない自分の作り方』(ベストブック)がある。


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