この5分間スピーチは次のようなメリットがあります。
話し手のプレゼン力が上がる
前回の「誰にでも伝わるプレゼン6つのステップ」を意識して話すことによって、プレゼンをうまく組み立てられるようになります。毎日繰り返せば、プレゼン力が自然と上がることでしょう。
聞き手が真剣に聞くようになる
「聞くだけの朝礼のスピーチ」とは異なり、このスピーチで聞き手は、話し手が言いたい要点を一言で伝える必要が出てきます。誰が当てられるか分からないので程よい緊張感が生まれ、聞き手は話し手の話を真剣に聞くようになります。その結果、話に興味を持つことにもつながります。
自分の話が伝わることが意外とうれしい
通常のスピーチでは会話は一方通行なので、伝わったか伝わっていないかが分かりませんが、この方法は相手から「○○さんの言いたかったことは○○ですね?」とフィードバックされるので、「ちゃんと伝わったな」ということが分かります。自分の話が相手にちゃんと伝わったことが分かるのは、意外とうれしいものです。
話し手が自分の潜在的な気持ちに気が付く
聞き手から「あなたの言いたいことは○○ですね?」とフィードバックされると、話し手は、「それほど意識していなかったけれど、確かにそういうこともあるな」と改めて自分の潜在的な気持ちに気づくことがあります。
「人の捉え方はさまざま」だと実感できる
以前ある企業の研修でこのスピーチを取り入れたとき、話し手から同じ話を聞いているにもかかわらず、聞き手数人からのフィードバックが全く異なっていたことがありました。3分間のプレゼンは意外と長く、聞き手が引っ掛かるポイントが異なるからです。「同じ話を聞いているのに、人の捉え方はさまざま」であることが実感できます。
コミュニケーションギャップを埋めるヒアリング力が高まる
「同じ話を聞いているのに、人の捉え方はさまざま」を別の言い方に変えると、「自分が伝えた意見と、相手に伝わった内容が同じとは限らない」ということ。これがいわゆる「コミュニケーションギャップ」と呼ばれるものです。コミュニケーションギャップを埋めるためには、「あなたの言いたいことは○○ですね?」と確認する必要が出てきます。
この5分間スピーチには、「相手の話を要約して確認する」(この傾聴の手法を専門用語では「バックトラック」と言います)が組み込まれているので、自然な形でヒアリング力を高め、コミュニケーションギャップを埋めることに役立つのです。
筆者は以前、ある企業のIT部門でチームをまとめる仕事をしていました。チームには、コンピュータのシステムやパソコンの保守をするメンバーがいました。
あるとき、メンバーの1人が嬉しそうな表情でこう話しかけてきました。
「竹内さん、実は最近ユーザーからうれしい声を聞くようになりました。以前は『君たちはユーザーの声を聞こうとしない』と言われていたのですが、この間ユーザーから『○○さんは私たちが本当に困っていることをよく理解して、的確な仕事をしてくれる』と言われたんです。その理由をよく考えてみたら――分かりました! いつも朝礼で『相手の話を要約して確認する』っていうのをやっているじゃないですか。あれが習慣になって、ユーザーにも、『○○さんがお困りなのは、○○ということですね?』と確認するようにしたんです。だから、意志の食い違いも減ってきて、ユーザーが本当に望んでいるサポートができるようになったんだと思います。ユーザーから褒められるってうれしいですね。」
3分間のプレゼンと、数人からのフィードバックのやりとりで5分。このように、今までの「一方的に話すスピーチ」から、プレゼン力とヒアリング力が高まるスピーチに変えると、職場全体のコミュニケーション力がレベルアップできます。あなたの職場でもぜひ試してみてください。
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