新人にとって「戸惑うこと」と「うれしいこと」:田中淳子のあっぱれ上司!(3/3 ページ)
4月に入社した新入社員が10カ月を迎えるこの時期「これまでに“戸惑ったこと”と“うれしかったこと”は何か」をインタビューしたことがある。今回はその回答を基に、新卒新入社員が感じていることを紹介しつつ育成のポイントを解説したい。
2年目を迎える社員に贈りたい言葉
以上、新入社員がよく口にすることを例に示してみた。そう言われてみれば自分もそうだったなあ、と懐かしく思い出せる項目ばかりである。新人は新人なりにいろいろなことを考えて、悩んで、そして楽しんでいる。こういう生の声を参考にしつつ、若手育成に創意工夫を取り入れたいものだ。
最後に新入社員が2年目になる直前に設けるであろう振り返りの場について述べておきたい。なんとなく1年目が終わり2年目になってしまうことがないよう、節目に面談などをして、「進級」儀式をすることは意味がある。その際、この1年で何を学びどう成長できたか、当人から聴いてみてほしい。
そこで、もし「あまり成長できた実感がありません」「まだまだ自信がありません」といった言葉が返ってくるようであれば、上司や先輩の目で見て「成長した」と思う個所を具体的にフィードバックしてみるとよい。
「5月に配属された時は、○○にとても時間がかかっていたけど、今は30分くらいでできるようになったね」「6月ごろ○○を1人でできなかったけど、今は1人でできるだけではなくて、他者に教られるようにもなっているじゃない」など、はたからみて明らかな成長の跡を指摘するのだ。
それにより新入社員は、「そこが自分の成長できた部分なのか」とあらためて自覚し、多少は自信を持てるようになるだろう。部下や後輩のダメな部分、不足している個所ばかりが目にとどまりやすいが、1年を無事終える暁には、1つ先輩になる彼、彼女には、より成長を促すような“はなむけのメッセージ”を贈りたいものである。
さて、本連載「田中淳子のあっぱれ上司!」は今回が最終回です。
2月から、テーマを変えて新しい連載を始める予定です。若手育成と限定せず、広く職場における「コミュニケーション」のノウハウを事例交えて紹介する予定です。これまで長くお読みいただきありがとうございました。現場の若手育成の場面で何等かのヒントを得ていただけていれば幸いです。
新連載開始までしばしお待ちくださいませ。
著者プロフィール:田中淳子
グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/産業カウンセラー。
1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタル イクイップメントを経て、96年より現職。IT業界をはじめさまざまな業界の新入社員から管理職層まで延べ3万人以上の人材育成に携わり27年。2003年からは特に企業のOJT制度支援に注力している。日経BP社「日経ITプロフェッショナル」「日経SYSTEMS」「日経コンピュータ」「ITpro」などで、若手育成やコミュニケーションに関するコラムを約10年間連載。
- 著書「速効!SEのためのコミュニケーション実践塾」(日経BP社)、「はじめての後輩指導」(日本経団連出版)、「コミュニケーションのびっくり箱」(日経BPストア)など
- ブログ:「田中淳子の“大人の学び”支援隊!」
- Facebook/Twitterともに、TanakaLaJunko
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