セブン-イレブンの鈴木会長が自らドーナツを試食するホントの理由すごい差別化戦略(4/4 ページ)

» 2016年02月24日 06時00分 公開
[大崎孝徳日本実業出版社]
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鈴木会長の存在感

 その要因の1つとして、筆者は鈴木敏文会長の存在に注目しています。鈴木会長のコメントやエピソードは実に理にかなっていることが多く、リーダーにおける覚悟の重要性などは大変勉強になります。

 詳しくは『セブンプレミアム進化論 なぜ安売りしなくても売れるのか』(朝日新聞出版/緒方知行、田口香世)などをご覧いただくとして、例えば高付加価値PBである『セブンゴールド』に関して、鈴木会長は以下のような考えで着手しました。

「どこも価値訴求に重きを置いたPBを出していないときに、あえてわれわれはこれをやろうと考え、取り組んできました。また歴史的に見ても、PBは安く売るためということで出てきたのは事実だとしても、そのときとは時代がもう違っていると考えたわけです」

「私は持論として、『量を追いかけても、なんの意味もない』『量は決して質を凌駕(りょうが)できない』『逆に質の追求の結果として、量はついてくるので、質を追求する』ということを厳しく言い続けてきました」

 実際に鈴木会長がメーカーと交渉した際には「全部引き受けるから最高の品質のものをつくってください。価格は気にしなくていい」と切り出し、相手のメーカー側は「どこにいっても、価格のことばかり言われるのに」と大変驚いたというエピソードが残っています。

 また、これは高付加価値PBに限定した話ではありませんが、食品の新製品開発において、最後は鈴木会長の試食で決定するというシーンをテレビ番組などで見るたびに、「ウソくさい! 顧客志向はどこにいった?」と筆者は不満を持っていたのですが、皆さんはどう思われますか?

 筆者は次の鈴木会長のコメントを拝見し、恥ずかしくなった次第です。

 「私の味覚が優れているから合否を決めるために試食をやっているのではない。トップ自らが試食を繰り返しやっているということで、商品の品質の向上を重視しているという姿勢が示され、絶対にいいかげんなことは許されないという緊張感がそこに生まれてくる。これが大事なことです」

 「リーダーとしての私の仕事は、幹部や社員の仕事を、どうマンネリ化させないかということについて、真剣に取り組んでいくこと」

 鈴木会長のリーダーシップやマネジメントに競合他社の追随を許さないセブンの優位性があるのは明らかです。とはいえ、コンビニにおけるドーナツ販売で、セブンは先陣を切ったものの、競合他社に追随され、現在は各社横並びの同質化した競争が展開されています。

 しかしながら、先行することを恐れないリーダー企業であるセブンならば、今後『セブンゴールド』でのドーナツ展開など、必ずや競合他社と一線を画した新機軸を打ち出してくるでしょう。

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