辞められないと思っている人の直接の原因として今でも多いのが、(3)「脅迫的言葉を繰り返し吐く」で示したような、「代わりを連れてこい」や「損害賠償をさせるぞ」という脅迫だ。ハローワークの紹介で入社した男性のケースを見てみよう。
始業時間2時間前に早朝出勤をし「自己啓発しろ」と命じられている。「自己啓発」は残業代が付かないとのこと。納得できないので退職を決意したが、会社は「後任者が見つかるまで退職は認められない」といい、「辞めたいなら、代わりを連れてこい」といわれている。
また、損害賠償を要求し脅迫する「辞めさせない事例」では、こんな悪質なケースもある。
自分が責任者を務める部門が、赤字続きで精神的にも肉体的にも追い詰められている。「退職したい」と申し出たら「辞めるなら、赤字分に対して損害賠償請求を起こすといわれた。
特に営業職の社員が辞める場合、過去に売掛金を回収できなかったことを取り上げ、その金額を支払うのであれば辞めてもいい、と脅す手口が少なくない。あるいは仕事上のささいなミスにつけこんで会社の損失分を支払えという場合もある。
あるいは実家の家族に連絡して、ウソの借金の保証人にして引き留めようとするケースもあるのだ。いずれのケースも単なる言いがかりにすぎず、もちろん支払う必要がないケースがほとんどである。
辞めさせない会社に共通するのは、基本的に人手不足の状態にあり、低賃金、残業代未払い、長時間労働など劣悪な労働環境に加えて、暴言・暴力などのパワハラ行為が横行している点だ。使えない社員を、いじめや嫌がらせによって自主退職に追い込んでいくのがブラック企業の手口とされている。しかし「辞めさせない会社」も、利用価値のない人は退職に追い込むが、利用価値のある人は潰れるまでとことん働かせるという意味では、同じブラック企業なのである。
では「辞めさせないブラック企業」から抜け出すにはどうすればよいのか。
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