静岡県の磐田駅を下車して、クルマを10分ほど走らせると、広大なグラウンドが目の前に広がる。ジャパンラグビートップリーグに参加する「ヤマハ発動機ジュビロ」の練習場だ。
そのグラウンドの一角に、ちょっとユニークな機械が登場した。地面に赤色の棒が何本か刺さっていて、銀色の丸い棒が12本、水平に設置されている。ラグビーのスクラムを強化するためにつくられた「スクラムマシン」だ。
一般的なマシンは、動くように設計されている。マシンに何人かが座って、フォワードの選手は足腰などを鍛えるために押し続ける。記者が学生のころ、選手は日が暮れるまで押し続けていたが、ヤマハのスクラムマシンは地面に固定されているので、動かない。
どこで売っているのか気になって担当者に聞いたところ、「自分たちでつくった」というのだ。ラグビー部のOBや社員有志、製造現場などの協力を得て、完成したという。
ヤマハ発動機のラグビー練習場に登場した「スクラムマシン」
マシンが動かないのには、意味がある。選手が100のチカラで押すと、100前後のチカラで反発するためである。つまり、試合で感じられるようなチカラを再現しているのだ。その仕組みに一役買っているのが、なんとヤマハのバイクである。同社のオフロード競技用バイク「YZ450FX」のフロントサスペンションを流用しているのだ。
「またヤマハが面白いことをやっているなあ」と感じたかもしれないが、完成までの道のりは平たんでなかった。マシンは予算などの関係で開発が一時頓挫しかけたが、どのようにして完成したのか。プロジェクトメンバーのリーダーを務める北川洋さん(同社、PF車両開発統括部)に話を聞いた。ちなみに、北川さんはかつて同部の選手として活躍し、その後は監督や部長などを務めている。聞き手は、ITmedia ビジネスオンラインの土肥義則。
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