土肥: フランスに足を運ばれて、現物を見てきたのでしょうか?
北川: いえ。見たことがないので、詳しいことはよく分かりません。ただ、話を聞いて、「こんなモノをつくればいいのかな」とイメージを抱くことができたので、マシンをつくろうと考えました。ただ、事はスムーズに進みません。開発するには、企画をしなければいけませんし、設計をしなければいけませんし、検証もしなければいけません。会社の人間に依頼することもできるのですが、彼らも自分たちの仕事があるので、簡単にお願いするわけにはいきません。
ということもあって、外部の設計業者に依頼しました。話はトントン拍子で進んでいったのですが、最後にひっかかることがありました。それは「製造物責任法」(製品の欠陥によって生命などに損害を被れば、被害者は製造会社などに対して損害賠償を求めることができる)。会社の法務担当に聞いたところ、「契約のなかにちゃんと盛り込まなければいけない」と指摘されました。このことを設計業者に相談したところ、対応が難しいという返事だったので、話はここでストップしてしまいました。
ただ、ここであきらめてしまうと、プロジェクト自体が頓挫してしまいます。それではいけないので、さまざまな方法を探ることに。メンバーの1人がオートバイ工場の担当者に話をしてくれました。制作に協力してくれないかと依頼したところ、「本業とは違う作業になりますが、イノベーションにかかわれるのであれば手伝わせてください」と言っていただき、実費だけで協力してくれることに。ただ、設計する人間がいませんでした。そこで、オートバイの設計を担当している元部下に打診したところ、興味を示して引き受けてくれました。
土肥: 設計するうえで、苦労したことは何でしょうか?
北川: プロジェクトメンバーは9人いて、うち8人がラグビー部出身。全員が会社の人間なので、「ヤマハ色を出したいよね」といった話になりました。ただ、ヤマハ色をどう出せばいいのかよく分かりませんでした。悶々としていたところ、スクラムマシンの部品にバイクのサスペンションを使うことはできないかと考えました。
先ほども紹介したように理想のマシンは、押している選手がスクラムを組んでいるかのように感じること。それを実現するには、バイクのサスペンションが理想ではないかと考えました。
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