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» 2019年03月11日 06時45分 公開

世のために生きたい トップ営業マンの地位を捨てて起業するも3度の倒産危機、そこから漂着した世界とは?フルカイテン・瀬川直寛社長(5/6 ページ)

[伏見学,ITmedia]

事業を方向転換

 そんな状況を見ていた瀬川さんの妻がある日こう言った。「このシステムを売ったら?」。

 もう顧客の顔が直接見えないB2Bの事業はやりたくないと思っていた瀬川さんだったが、妻は反論する。「自分がこんなに助かって、笑顔で暮らせるようになっているのに、ほかの人たちの役には立てないというわけ? 売ったらええやん」。

 瀬川さんはハッとした。さすがに3度の倒産危機はこたえたし、さまざまな課題が解決していくシステムの力を目の当たりにして、これは何かの役に立つのではという自信もあったからだ。熟考の末、ついにはこのシステムの販売を事業化することに決めたのである。

起業時の瀬川夫婦。後に妻の一言で事業を方向転換した 起業時の瀬川夫婦。後に妻の一言で事業を方向転換した

 やるのであれば、本気でやるべきだ――。瀬川さんはベンチャーキャピタルを回り、17年5月に初めての出資が決まる。そして、システムの原型に開発を重ねて、同年10月に「FULL KAITEN バージョン1」をローンチした。さらに改良を加えて、19年2月にバージョン2をリリースした。現在は、スポーツ用品メーカーのミズノやヘルスケア事業のファイテンなど十数社をユーザーに抱え、彼らの商品在庫にまつわる課題解決を支援している。

 一方で、ベビー服のEC事業は18年9月にIT企業のエイジアに事業譲渡した。「話を持ち掛けられたとき、悩みに悩みました。けれども、これは自分の人生でもう一度B2B事業に本腰を入れろということなのかなと思い、決断しました」と瀬川さんは力を込める。

 ベビー服の事業は3度も大きな失敗をしたわけだったが、途中で止めようとは思わなかったのだろうか。「より多くの子どもたちに素敵なベビー服を着せてあげたいと思って起業した、その理念がぶれることはありませんでした。それに会社を立ち上げて、そう簡単にいかないから止めるというのはNGで、それを乗り越えないと自分の価値はないと思いました。事業を諦めるという選択肢はなかったですね。ただ、経営者としては本当にミスばかりでした」と瀬川さんは苦笑する。

 起業後しばらくして、瀬川さんが家族とともに近所の祭りに行くと、自分の会社が販売していた浴衣を着ている子どもたちをたくさん見掛けた。「この仕事をやってて良かった……!」。そう強く思えたこの光景が今でも忘れられないという。

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