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» 2019年03月11日 06時45分 公開

世のために生きたい トップ営業マンの地位を捨てて起業するも3度の倒産危機、そこから漂着した世界とは?フルカイテン・瀬川直寛社長(4/6 ページ)

[伏見学,ITmedia]

3度目の危機

 2度目の倒産危機を乗り越え、商品回転率を17回転にまで高めた瀬川さんは、もうこれで事業は安泰だと思った。

 そこで一気に畳みかける戦略を取る。販売数量を大きく増やす方向に舵を切ったのだ。「これが私の人生で過去最大の失敗だったのです」と瀬川さんは吐露する。

 注文件数を増やすために何をしたのかと言えば、16年春ごろに送料が無料になる注文金額を8000円から2000円に引き下げた。

 結果、月間数千件だった注文件数は1.2倍になったが、安物買いの顧客ばかりになり、客単価は7500円から3000円近くも下がった。売れど売れども大赤字で、社内はギスギスし、ついには辞める従業員も出てきた。3度目の経営危機を迎え、瀬川さんは生きた心地がしなかった。半年ほどで送料無料になる金額を8000円に戻したものの、以前の顧客は戻って来なかった。最後の最後は受注率を改善するためにクーポン券を乱発したが、焼け石に水でほぼ変化はなかった。

 送料を安くすれば客単価が下がることは予測していたが、注文件数がもっと伸びると思っていた。1.4倍まで増えれば大成功という試算をしていたのである。アクセス解析やマーケティングオートメーションなどさまざまなツールを導入し、コンバージョン(最終成果)の改善に力を入れたが、どうしても1.2倍以上になることはなかったという。

 原因を分析したところ、分かったことが2つあった。1つは部分最適にしかなっていないことだ。例えば、サイトのバナーのクリック率が上がっても、そこから遷移した先のページでの離脱率が増えるなどだ。

 もう1つはコンバージョン率に関してである。ECサイトのコンバージョン率とは、分母がページビュー(PV)で分子が受注数。コンバージョン率が数パーセント良くなったとはいえ、分母がとても大きくない限りは、インパクトが出ない。「当時は月間数百万PVで、ベビー服のECサイトとしてはかなり大きかったけど、その程度では所詮誤差なのです」と瀬川さんは話す。

 結局、施策を打つ前にすべて戻した。しかしユニークなのが、売り上げはどん底のときとほとんど変わらなかったのである。これに瀬川さんは興味を持った。多くのECサイトは送料無料や受注率の改善などいろいろなことをやっているが、巨大な規模のサイトでなければ、実はやってもやらなくてもそこまで大差はないという。

 瀬川さんは原点に戻って考える。どうすれば売り上げを増やせるのか。ECの売り上げとは、客単価×注文件数であり、注文件数を追いかけても仕方ないことが実証された。つまり客単価をどう上げるかが重要な要素なのだ。さまざまな考察をするうちに、商品の価格は客単価にそれほど関係ないことが見えてきた。

FULL KAITENの画面イメージ。客単価帯別に売り上げを分析 FULL KAITENの画面イメージ。客単価帯別に売り上げを分析

 「例えば、500円のAという商品について分析したところ、Aはほかの商品と一緒に買われている確率がすごく高くて、平均で客単価5000円になっていました。そこですべての商品に対して、その商品が1個でも含まれた注文の客単価がいくらかを計算すると、商品ごとに売り上げの貢献度が違うことに気付いたのです。これがヒントになりました。例えば、月間1万件の注文があるとして、その1万件がどういう客単価で何件ずつ注文があるのかを棒グラフにしてみたら、どの辺の客単価の件数が最も多いかが分かりました。従って、客単価を上げたかったら、注文件数がピークになっている客単価よりも高い部分の注文を増やして、それよりも低い部分は減らせばいいのです」

 そこまで気付いた瀬川さんは、狙いを定めたい客単価帯を決め、どういう商品が主力として買われているか、どの商品と商品の組み合わせで買われているかを分析し、その客単価アップのトリガーとなる商品をサイトで訴求するようにした。

 「どのような客単価を狙うべきか、そのためにお客さんに勧める商品は何なのか。これが分かれば客単価はシステマチックに上げられるのです」

 すぐに瀬川さんはそのためのシステムを構築し、活用した。すると客単価は見る見るうちに改善して、7900円くらいまで上がったのである。またしても倒産危機を乗り切ったのである。

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