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希望した客はいつもタダ! 奈良のトンカツ「無料食堂」が繁盛する深い訳繁盛店から読み解くマーケティングトレンド(6/6 ページ)

» 2019年04月19日 07時00分 公開
[岩崎剛幸ITmedia]
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令和は「ソーシャル企業」の時代

 13年に厚生労働省が行ったミレニアル世代(一般的には1980年代〜2000年代初頭までに生まれた人)向けの「若者の意識に関する調査」で、企業の社会貢献に関する質問では、実に約80%の人が「企業は利潤追求だけではなく、社会的責任も果たすべき」と答えています。この傾向は特に女性に強く、社会的責任を追求できない企業は存続できないと考えているのです。今の10〜30代の人たちの感覚の実態です。

 これは働きたい企業選択の際の基準にもなり始めており、あらゆる意味で企業における社会性がますます求められる時代になってきたと言えるのです。

 まるかつさんには商品力や良いサービスといった、繁盛店としての条件が既に備わっています。ただ今後、同店のようなユーザーからの厚い支持を日本企業が受けるには、「誰かの応援をしているかどうか=社会性」が求められていく、と言えます。

 地域で暮らす人々や社会的弱者、世の中で困っている人、高齢者、子どもたち、立場の弱い人などを事業を通して守り、応援し支援する。まさに企業としての社会貢献が事業を行う上で必須の活動になる時代です。

 しかし、まるかつさんはこの無料食堂の取り組みを単なる「マーケティングの手段」としてやっているわけではありません。地域でがんばって商売をしている1人の人間として何か地域のためにできることはないかと考えた結果、取り組んでいることです。

 このような発想だからこそ、顧客に応援されているのです。そして、このような発想で社会貢献や地域活動をできる企業が本当の意味でのソーシャル企業であり、共感される企業と言えます。

 「企業は社会性>教育性>収益性の順番が大事だ」と、私は舩井幸雄・船井総合研究所創業者から教えられました。令和時代に必要な経営のキーワードは、まさにこの「社会性」です。

 PR的な取り組みではなく、社会性をいかに自然体で、無理なく取り入れることができるかがこれからの繁盛店の条件です。

 令和時代。本当のソーシャル企業を目指して経営をしていきましょう。

著者プロフィール

岩崎 剛幸(いわさき たけゆき)

ムガマエ株式会社 代表取締役社長/経営コンサルタント

1969年、静岡市生まれ。船井総合研究所にて28年間、上席コンサルタントとして従事したのち、同社創業。ファッションを専門分野とした流通小売業界のコンサルティングのスペシャリスト。「面白い会社をつくる」をコンセプトに各業界でNo.1の成長率を誇る新業態店や専門店を数多く輩出させている。街歩きと店舗視察による消費トレンド分析と予測に定評があり、最近ではテレビ、ラジオ、新聞、雑誌でのコメンテーターとしての出演も数多い。

岩崎剛幸の変転自在の仕事術


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