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» 2019年04月19日 07時00分 公開

繁盛店から読み解くマーケティングトレンド:希望した客はいつもタダ! 奈良のトンカツ「無料食堂」が繁盛する深い訳 (2/6)

[岩崎剛幸,ITmedia]

困窮した親子や学生が利用

 きっかけは18年2月に北陸を襲った豪雪。北陸のとある地域の人々向けに「もし雪が解けて奈良に来ることがあったらトンカツを半額で提供する」という取り組みをしたところ、その人たちに大変喜ばれたのだそうです。

 その後、金子店長が日本の貧困実態について調べたところ、数十円の食費すら支払えない人や、こども食堂などに毎日通ってご飯を食べている子どもがたくさんいることを知りました。

 そこでスタートさせたのが「無料食堂」の企画でした。「18年5月に始めて19年3月までに160人ほどが利用されています」(金子店長)。月に15〜6人、2日に1人程度の頻度です。

 金子店長によると、例えば次のような人々が利用していったとのことです。

「18年の秋頃、病気で働けなくなった父親が3人の子どもたちと奥様を連れて食事にこられた。久しぶりの外食と、本当に喜んでいらっしゃいました。2回来店されています」

「18年の夏、『子どもが5人いるが、自分が急に会社の都合で失業し、せめて子供たちに』とお弁当をお持ち帰りされた。そのあとも何度かご利用されている」

「生活に困窮していた学生さんがご利用されて、後日、ご家族で御礼にとお食事にきてくださった」

 大切なのは、この取り組みは金子店長が店の知名度アップではなく、「純粋に世の中の役に立てれば」という思いで始めた点です。トンカツの繁盛店になって利益が出るようになった上で、困っている人や地域のために貢献したいと考えて仕事をますます頑張っているのです。

photo 「無料食堂」を告知したまるかつのツイート。共感するリツイートが殺到(Twitterより引用)

 その思いに共感した人々が、「有料」で(というか普通にお金を払って)トンカツを食べたいと次々にリピートするようになっている、と言えるでしょう。まさに応援の輪です。お客さんの気持ちとしては、まるかつに行ってトンカツをお金を支払って食べることで、店を応援しているわけです。

 今の時代は、「純粋に世の中の役に立ちたい」という思いが分かると、それを支持するニュースがSNSを通じて一気に広がります。もちろん逆もあります。この取り組みについても、あれこれ言う人がでないとも限りません。

 ただ実際には、同店のTwitter公式アカウントが「無料食堂」スタートの告知をしたツイートには3万5000以上の「いいね」と、1万8000以上のリツイートが集まりました。「張り紙見たら泣けてきた」「嫌みな感じも無くすごくすてき」など、共感する書き込みばかり。まるかつさんの取り組みをメディアが紹介したことも大きいですが、SNSを通じて支持が全国にまで広がったと言えます。

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