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希望した客はいつもタダ! 奈良のトンカツ「無料食堂」が繁盛する深い訳繁盛店から読み解くマーケティングトレンド(3/6 ページ)

» 2019年04月19日 07時00分 公開
[岩崎剛幸ITmedia]

もともと「有料で食べたくなる」繁盛店

 筆者は18年12月に同店を訪れました。行ってみて驚きました。なぜならまるかつさんは、「本当の繁盛店」だったからです。この日、私はお昼ごはんを午後2時まで我慢して店に向かいました。仮に混んでいたとしても、この時間ならさっと入れるだろうと思ったからです。

 奈良駅からバスで10分ほどの場所にありました。店は外から見ると普通のロードサイド型の飲食店という雰囲気。特別な店という感じではではありませんでした。

photo トンカツ店「まるかつ」の外観(画像の一部を処理しています)

 着くと、午後2時を過ぎているのに行列ができています。私は30分待ってようやく席に着くことができました。

 私が驚いたのは、トンカツのおいしさに加えて従業員のサービスレベルも高かった点です。一人一人に丁寧に接客をしていてとても気持ちがいい。きちんとあいさつし、丁寧に注文をとり、レジ対応時に次回来店のクーポンを渡す。飲食店のルーティンの接客サービスをまじめにきちんとやっていました。店の外までお客さんを見送ることもありました。

 私の座った席がレジの横だったため、支払いをずっと見ていたのですが、その時は全員がお金を支払って帰っていました。やはり、無料食堂があくまで生活や食事に困っている人向けの活動として成立していることも分かりました。

実は高めな日本の相対的貧困率

photo 相対的貧困率の国際比較(出典:内閣府「平成26年版 子ども・若者白書」)

 内閣府が相対的貧困率を国際比較した10年のデータによると、日本の相対的貧困率はOECD加盟国の平均を上回り、先進国の中では米国などに次いで高い貧困率(16.0%、日本は09年のデータ)となっています。

 日本の子どもの相対的貧困率は1990年代から上昇傾向にあり、2009年には15.7%になっています。子どもがいる現役世帯の相対的貧困率は14.6%であり,そのうち大人が1人の世帯の相対的貧困率が50.8%と、大人が2人以上いる世帯に比べて非常に高い水準です。一人親家庭など、大人1人で子どもを養育している家庭で特に経済的に困窮している実態が明らかなのです。

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