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宇宙で野菜や培養肉を地産地消!? プロジェクト「Space Food X」に迫る宇宙ビジネスの新潮流(2/4 ページ)

» 2019年05月08日 07時00分 公開

現状は調理済み食品を地上から輸入

――JAXAとして食に着目した背景は何でしょうか?

菊池: 10年ほど前にJAXA(宇宙航空研究開発機構)の宇宙教育センターにいたことがあるのですが、(宇宙での)食に興味を示す子供たちが非常に多かったことが印象的で個人的に着目していました。その後、広告代理店に出向していた際にも食品・飲料メーカーから宇宙関係の話をもらうことが多く、何かできないかと思案を続けてきました。

 18年からJAXAではオープンイノベーションプログラム「J-SPARC」を立ち上げて産業界との共創機会を探索していて、自分もプロデューサーの1人として活動をしています。J-SPARCの主要事業テーマでも、宇宙を楽しむという観点から「衣食住」を掲げています。そうした背景もあり小正さんたちと議論した結果、今回のSpace Food Xのプログラム立ち上げに至りました。

photo 宇宙空間での野菜栽培の想像図(画像はイメージ、Space Food X提供)

――今までの宇宙食開発はどのように行われてきたのでしょうか?

菊池: 従来、宇宙食は各国政府機関が有人宇宙活動を行うために開発をしてきており、これまでは米国とロシアが中心でした。例えば国際宇宙ステーションでは現在約300食が標準食として備えてあるのですが、米国製とロシア製が半分ずつです。米国はNASA(米航空宇宙局)が自前でフードラボを持っており、開発から製造まで行っているのが特徴です。

 国際宇宙ステーションでは、標準食以外に(全体の)15%程度の分量の「ボーナス食」という物を持っていくことが可能で、日本も独自に宇宙食を開発しています。米国と違うのは、JAXA自身が開発するのではなく、認証制度を準備することで食品メーカーなど民間企業が開発したものをJAXAが認証するという仕組みになっている点です。

最終的には宇宙で地産地消を

――Space Food Xが目指す将来の宇宙食とはどのようなものでしょうか?

菊池: 宇宙食技術の発展は「宇宙食1.0」「2.0」「3.0」と、3段階で定義することができます。1.0は地上で調理したものを宇宙空間に持っていく段階で、今までは全てこの方法です。2.0は地上から食材だけ持っていって宇宙空間で調理をする段階。「宇宙料理人」などの職業が生まれるかもしれません。そして最終形態の3.0は、現地で地産地消を行うことだと思います。

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