せっかくアウトサイダーになっているのだから、インサイダーの考えないことを考えないと張り合いがない。
留学学者の、半分模倣、半分誤解の論文を横に置いて、非留学の野暮天は勝手な仮説のようなものをつくり上げる。
もちろん、正説などにはならないが、モノマネがすぐ古くなるのに対して、アウトサイダーの「非常識的ドグマ(教義)」は枯れるのに時間がかかるようである。ひょっとすると次の時代にまで生きのびることができるかもしれない。
非留学者は、小さな袋小路に迷いこんだらコトである。専門などといって、小さなことにかかずらわっていると、いつしか、大問題のように誤解することになりかねない。そんなことがあっては大変である。
文学の研究にしても、文学作品ばかり読んでいては、“木を見て森を見ず”のようなことになりやすい。心理学も面白い。社会学も面白い。サイエンスも面白い。そう考えるのが健康な思考である。
欧州や米国でも、アウトサイダーのアプローチが一部で注目されているようだが、なかなかうまくいかないらしい。インサイダーがにわかにアウトサイダーになれないのは是非もないこと。
そこへいくと、はじめからアウトサイダーである人間は、自由に新しいことを“発見”することができる。
留学しなかった、できなかった人間は、身の丈に合ったドグマで自分を守るのである。
外山滋比古(とやま・しげひこ)
1923年、愛知県に生まれる。英文学者、評論家、エッセイスト。お茶の水女子大学名誉教授、文学博士。東京文理科大学英文科卒業後、雑誌「英語青年」編集、東京教育大学助教授、お茶の水女子大学教授、昭和女子大学教授を歴任。専門の英文学をはじめ、言語論、教育論など広範囲にわたり独創的な仕事を続ける。著書には240万部のベストセラーとなった『思考の整理学』(ちくま文庫)をはじめ、『100年人生 七転び八転び――「知的試行錯誤」のすすめ』『思考力』『思考力の方法』『忘れる力 思考への知の条件』『「マコトよりウソ」の法則』(以上、さくら舎)など多数。
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