Mazda3の最後のピース SKYACTIV-X池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/6 ページ)

» 2019年07月16日 07時01分 公開
[池田直渡ITmedia]
このエンジンを楽しむためには、ATでは普通使わないような低回転高負荷で運転できる意味でもMTは魅力的

 もうひとつ面白いところがある。特にバルブ可変機構が当たり前になってからエンジンの回転落ちが遅くなった。そこの回転落ちを補助するためにMazda3ではマイルドハイブリッドを積極的に使っている。シフト時に回生動作を織り込んで、エンジンの回転下がりを早めているのだ。それはMTの操作にとって回転が合うのを待つ時間を短縮することにつながってくる。

 さて、エンジンフィールについて、先走って書いてしまえば、どの領域でも格別の信頼感が感じられる。「沈着冷静で仕事ができ、なおかつ朗らか」そういう安定感のかたまりのようなエンジンである。広島製だけに往年のカープのエース、北別府学を思い浮かべた。そういえばMazda3の主査は別府さんという。

 高回転域でカムに乗って吹け上がるドラマチックなものを求めると、そういうものではない。その楽しさは知らないわけではないが、そういう特性は、技術的にはバランスが悪いとしかいえない。SKYACTIV-Xにはそういう「ムラ」みたいなものが全くない。極低速からトップエンドまで、表情も変えずに正確に仕事をするエンジンだ。

 こういうエンジンを作るのは、実は高回転で豹変(ひょうへん)してビュンビュン回るエンジンを作るよりはるかに難しい。理想のエンジンのリファレンスをどう描くかというエンジニアの見識と、そのためにエンジンにどう振る舞わせるかを考えて、丁寧な作り込みをしないとこんなエンジンにはならない。

エンジンの回転落ちをサポートする回生発電システム

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