インタビュー
» 2019年07月26日 05時05分 公開

暴力団取材の第一人者・溝口敦 「刺されてもペンを止めなかった男」が語る闇営業問題の本質「メディアの企業体質」に苦言(3/5 ページ)

[服部良祐, 今野大一,ITmedia]

闇営業報道に見るメディアの“偏向”

――溝口さん以外のジャーナリストでは、マスコミの事件担当記者であってもここまで暴力団に食い込むのは難しいと思います。特に、昨今の「サラリーマン化」した記者ではほとんど扱えないテーマです。

溝口: ただ、「暴力団に取材する価値があるかどうか」という問題はあると思います。新聞社もヤクザという組織への興味を失っていると感じる。例えば、(暴力団がらみの事件記事で)「山口組系●●組の何某」という書き方はあまりしません。(二次・三次団体の)組名まで出したら、その組を顕彰することになってしまうかもしれない。暴力団の“社会的価値”も低くなってきていると感じます。最近は抗争もほとんど起きませんね。

――一方で、暴力団ではありませんが、芸能人が振り込め詐欺グループのような反社会的勢力に「闇営業」をしていたニュースが現在、非常に話題です。メディアの記者たちが、いわゆる反社の人間と取材で渡り合う術を持っておくことは、今後も重要になるのではないでしょうか?

溝口: 今の吉本興業の騒ぎと言うのは、「反社のグループが主催したパーティーに、吉本の芸人がたくさん参加していて、吉本側が彼らを処分した」という事件ですよね。ワイドショーなんかが騒いでいるのもその間の出来事であって……。どうなのかな。

 例えば、その反社は何という名前なのか。「日本で最大の振り込め詐欺グループだ」という週刊誌の記事もありましたが、その実名はなかなか出てこない。ワイドショーもこれだけ騒いでいるにもかかわらず、そこに触れようとはしないじゃないですか。

 芸能人と反社が接触したという事実を元に、「出席した芸能人は金をもらうことを拒否しているけれども、そんなことはあり得るのか」とか、「芸能人はパーティー主催者の性格を知らなかったのか」といった話に問題が収束している。

 (反社の人間の実名は)知らなくてもいいことなのかもしれないけれど、僕はやっぱりね、メディアの興味の持ち方がちょっと偏っているという気がします。

――当たり前ですが、真の悪とは芸能人ではなく振り込め詐欺グループの方です。

溝口: 半グレ(暴力団に所属せず犯罪や暴力行為を行う集団)の人間に聞いたのですが、パーティーを主催していた人間は「日本一の振り込め詐欺グループ」ではない、という話もあります。だからどうということではないのかもしれないけれど、それを知って取材するのと、知らないで取材するのとではえらい違いがあると思いますね。

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