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仕事と休暇を一緒にする「ワーケーション」 JTBとスノーピークがハワイで展開する事業の背景を直撃リゾート地でリフレッシュ(4/4 ページ)

» 2019年09月25日 06時00分 公開
[鬼頭勇大ITmedia]
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他社でのワーケーション支援事業

 ちなみに、ワーケーションは「テレワーク」の1つだとされる。首都圏の混雑緩和や「働き方改革」の一環として国や政府が活用を推進しているテレワーク。在宅勤務と混同されがちだが、テレワーク=在宅勤務、ということではない。

 日本テレワーク協会によると、テレワークとは「情報通信技術(ICT=Information and Communication Technology)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のこと」とされる。同協会は、このテレワークを3つに細分化している。自宅で働く「在宅勤務」、移動中にパソコンや携帯電話を使って働く「モバイルワーク」、そして勤務先のオフィス以外のスペースで働く「サテライトオフィス」だ。

 このうち、ワーケーションはサテライトオフィスに属する。キャンピングオフィスハワイは、ワーケーションのハード面、ソフト面両方の提供だった。一方、ハード面であるサテライトオフィスを提供する企業も出始めている。

 三菱地所は19年5月から、和歌山県にワーケーション用オフィスを展開。「WORK×ation Site(ワーケーションサイト)南紀白浜」と称し、グループ客向けに提供している。利用は1日1社に限定し、1日から最大1週間まで予約できる。利用人数は最大16人で、料金は1日につき10万円。主な仕事スぺースとなる60平方メートルの部屋に加え、7坪の共用会議室と30坪の共用スペースも利用可能だ。

ワーケーションサイトの外観

 同社の担当者によると、「丸の内でオフィス事業を展開しており、テナント企業がより良く働ける環境を作りたいと考え企画した」という。「そこまで需要が高くないかもしれないが、『とりあえずチャレンジしてみよう』と思って始めた」とのことだが、サービス開始以降、予想外の反響があった。「毎月コンスタントに予約が入っている。予約が入っていない月というのは今のところない。これだけのスピード感でこれほどの反響があるのはうれしい」。長期休暇に限らず、オールシーズンで予約が入っている。

ワーケーションサイトの内観。会議と個人ワークがしやすいよう工夫

 中には既に複数回の予約をしている人もおり、「利用方法にかなりバリエーションがある」という。既に利用した人からは、「行ってみて良かった」という声が目立っているとのこと。また、和歌山県までの移動には飛行機が使われることが多く、「スイッチが切り替わり、リフレッシュして仕事できる」と非日常感を評価する声も上がっている。一方で、距離感や交通機関の料金など、遠方であることを懸念している人も多いという。担当者は「サービスもまだまだ不十分だと考えている。さまざまな点を改善しながら、北海道から沖縄まで、幅広いエリアでの展開を検討中」と話した。

 近畿日本ツーリスト関東(東京都新宿区)では19年7月、長野県駒ケ根市へのワーケーションツアーパックを販売した。料金は、23,800円(2名1室利用で食事なし、大人と子ども1人ずつで利用の場合)。個人向けとして最大10組を応募したところ、5組が参加。参加者には駒ケ根市にあるテレワークオフィス「Koto」「ぱとな」を開放した。こちらでもリフレッシュして仕事ができる点が好評だったという。今後については「旅行会社ならではのノウハウを生かし、新しい提案をしていきたい。今後はオフィス風の部屋などを用意できると面白いかもしれない」(担当者)とした。

 このように、徐々に広がりつつあるワーケーション。提供する側はプログラムを丸ごと提供したり、サテライトオフィスを提供したり、はたまた旅行パックとして販売したりと提供する企業側は手探り状態なのが現状だ。一方、利用する側としてはリゾート地でゆったりとした時間を過ごしながら、普段では出てこないようなアイデアが浮かんだり、チームの絆を深めたりできるチャンスがある。仕事とプライベートをきっちりと分けるのではなく、両方をシームレスにする新たな「ワークライフバランス」の形として、今後日本で定着するだろうか。

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