クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

スバルはこれからもAWD+ターボ+ワゴン池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/5 ページ)

» 2019年10月31日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

 もう1つはダウンサイジングターボだ。これは従来のフラット4の延長線を担う予定の技術で、1.8リッターの直噴ターボであり、希薄燃焼エンジンでもある。

 一般的にいって希薄燃焼は難しい。薄くした混合気を従来のプラグ発火による火炎伝播(かえんでんぱ)によって燃やそうとすると、末端まで燃え広がらない内に延焼が止まってしまい、その結果煤(すす)が出る。この煤が燃焼室内にたまって、高温の熱源となり、今度はそこを基点に着火が始まってしまう。つまりノッキングが止められなくなるのだ。

 かつてトヨタや三菱が失敗して撤退したことを、スバルは当然のごとく知っているだろうから、この問題を何らかの技術で解決できたからこその新世代フラット4なのだろう。

 普通に考えれば、直噴インジェクターの能力向上と、タンブル(縦渦)の強化によって、燃料の均一性を高めたのは間違いない。それは絶対にやっているだろうが、残念ながらそれだけで解決できるのならトヨタも三菱も撤退していない。おそらくはEGR(排気ガス再循環)による燃焼コントロール技術が上がったのではないか? EGRとは、吸気に意図的に排気ガスを混ぜる方法だ。ものすごく乱暴にいえばEGR量を増やすことは、燃焼のブレーキとなる。燃焼の暴走であるノッキングがもたらすエンジン破壊を防ぐために行う制御だ。

 従来このブレーキの役割を果たしてきたのは、点火の遅角(リタード)だ。つまり圧縮のピークが過ぎてから火を付けることで燃焼の制御を行う。本来高圧縮であればあるほどエネルギー回収率は上がるので、こうやって遅角させるとてきめんにエンジン効率が落ち、燃費が悪化する。そこで昨今は、遅角をできる限り行わず、代わりに排気ガス(不活性ガス)を多く混ぜて、燃焼の化学変化を穏やかにするのだ。

 遅角の場合と違って、EGRのケースでは燃料の供給量も絞るので、燃焼がキツい場面ではパワーこそ出ないが、熱効率は落とさずに済む。遅角制御が頻繁に割り込む過給エンジンにとって、EGRの燃費抑制効果は少なくないだろう。そして希薄燃焼を行うのは、大抵が高速道路の定速巡航時だ。元々エンジンがフルパワーを発揮するような領域ではなく、能力に対して割とゆるゆると仕事をしている場面なので、問題になりにくい。実際のところスバルがこのダウンサイジングターボエンジンの燃費を発表した時に、この技術のポテンシャルが確定する。

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