クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

スバルはこれからもAWD+ターボ+ワゴン池田直渡「週刊モータージャーナル」(5/5 ページ)

» 2019年10月31日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]
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レヴォーグのスタイル

 さて、最後にレヴォーグのデザインだ。真横から見た全体のシェイプは、ドライバー頭上を頂点に後ろに下がっていく流線型で、それはサイドウィンドーのオープニングラインのみならず、実際のルーフも後ろ下がりだ。

 これが意味しているのは、ワゴンの立ち位置の修正である。かつてのレガシィ・ツーリングワゴンは、ほとんどのモデルがルーフラインを情け容赦なく真っ直ぐ後方に引っ張るワゴンの王道デザインだった。いうまでもなく後席の頭上空間と荷室の容量を優先すれば、クルマの形はそうなる。そこにわずかながら変化が訪れたのは5代目の時で、ルーフはともかく、サイドウィンドーのオープニングラインを後ろ下がりに構築し、スタイルにクーペ的要素を持ち込んだ。

新型レヴォーグのサイドビュー(東京モーターショー出品車)

 そして初代レヴォーグでそのルーフラインの後ろ下がりが明確化していくのだ。当然これはSUVの影響が絶大で、車高の高いSUVの場合、室内のエアボリュームで見ても荷室の空間で見ても有利なのは明らか。ワゴンは、そこで敵わないことを織り込みながら立ち位置を決めなくてはならない。

 東京ショーでお目見えした新型レヴォーグのサイドビューは、相当明確にクーペ的だ。エンジニアが本気で最大のラゲッジスペースを取ろうと考えていたらこうはなっていないはずだ。だからスバルがGTワゴンを死守するといっても、全く何も変わらない過去をひたすらキープしようとしているわけではない。それは新しいスペシャリティの形としてのワゴンだ。スバルの場合、そもそもSUVのフォレスターがとことん実用を意識したラゲージを備えており、SUVはスペシャリティを志向していない。そしてその部分を担う重要な役割が与えられたのが新型レヴォーグなのだ。

筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)

 1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。

 以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う。


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