イエリデザインプロダクツの貸借対照表は、帳簿上は資産超過となっていたが、売掛金や在庫(商品)などに実在性のないものが多数計上されており、実態としては大幅な債務超過が続いていたとみられる。
15年度のアパレル関連業者(小売・卸)の倒産は311件発生している。
これは前年度比で6.5%の増加であり、11年度以来4年ぶりに300件を超える水準となった。特に卸業者に関しては、前年度比で18.8%も増加しており、年明け以降は倒産の増加が顕著で暖冬の影響も懸念されていた。円安によるコスト増に加え、消費不振から価格転嫁も難しく、その板ばさみがアパレル卸の倒産増につながっている。
また、アパレル業界に限らず、財務悪化に伴う金融機関などへの支援要請のなかで、長年の粉飾決算が発覚し、企業の再建を断念しなければならないケースは後を絶たない。
イエリデザインプロダクツは、スポンサー選定などにより再建を図っていくこととなったが、当時は財務の毀損が大きいとの評も聞かれた。
そのため、本格的な再生には時間がかかりそうとの見方が強いなか、民事再生法の適用の申請から約2カ月後の8月、東証2部上場の衣料品専門商社がニット事業を買収。イエリデザインプロダクツは、このスポンサーの一つの事業部として存続することとなった。
暖冬によるニット人気低下、生産拠点を日本に移したことによるコスト増、景気低迷による消費低迷、そして熊本地震。これらは、イエリデザインプロダクツ倒産の最大の直接的要因といえる。
ただし、こうした不可抗力的な外的要因があるなかで売上高の拡大にこだわった結果、粉飾決算が行われ、正確な損益を把握できていなかったという、いわば「影の要因」も決して見過ごせない。逆境のなかを突き進み、少しずつでも業績を回復していくには、自社が置かれている状況と、自社の経営実態を正確につかむことが必要不可欠なのだ。
帝国データバンク 情報部
1900年創業の民間信用調査会社。国内最大の企業情報データベースを保有。帝国データバンク情報部は、中小企業の倒産が相次いだ1964年、大蔵省銀行局からの倒産情報提供に応じるかたちで創設。情報誌「帝国ニュース」の発行、「全国企業倒産集計」などを発表している。 主著に『なぜ倒産』(日経BP社)『御社の寿命』(中央公論新社)『あの会社はこうして潰れた』(日経BP社)などがある。
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