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インタビュー
» 2019年11月29日 08時00分 公開

ソフトウェア・ファーストな組織へ:自身を破壊し続けること――さくらインターネットの田中社長が語る「変化に強い開発組織」の条件 (3/3)

[伊藤健吾,ITmedia]
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「やりたい人重視」で強い開発組織をつくる

及川 このお話と、最初に伺った「変わり続ける」というお話は深い部分でつながっていますね。社員を信頼して変わり続けるというのは刺激的で素晴らしい組織文化だと思います。

 とはいえ、社員がその変化のスピードについていくのは大変です。特にエンジニアは、新しい技術をキャッチアップし続けることが仕事上も重要ですが、会社としてそれを支援するような取り組みは行っていますか?

田中 スキルアップのために社内研修を推奨するような取り組みもやっていますが、一番大切なのは職場の多様性だと思います。異なるバックグラウンドを持つエンジニア同士がチームで働き、そのチームが常に組み替えられるという環境が、学びを促進する。こういう思想で組織運営をしています。

 一例として、当社はデータセンターが石狩にあるので現場にいるエンジニアとサービスのプロビジョニングをやっているエンジニアが一緒に仕事する機会があまりないんですね。だから、あえて一緒に仕事をする機会を作るようにしたり、部署異動で両方を行き来するように促しながら、知識を増やしてもらいます。

及川 部署異動は当人の希望で?

田中 当人の希望と、会社から「こういう仕事をやってみないか」と提案するのと、両方のパターンがあります。ただ、どちらの場合でも、異動するエンジニア本人の意思を尊重するようにしています。

 当社のコーポレートスローガンは「やりたいことをできるに変える」なんですね。だから、社内にもやりたいことがある人の意思を尊重する文化があって。ある仕事をこなすためのスキルや経験が足りなくても、やりたい人に任せてできるようになれば、そのまま会社の資産になります。その人のキャリアアップにもつながるでしょう。

 一般的な組織はその逆で、どうしてもやれる人を探してしまう。採用も同じで、ほとんどの募集要項がスキルを重視した内容になっています。一方で当社はやりたい人かどうか、可能性を感じる人かどうかを採用基準にしています。スキルがあっても不採用になるケースがけっこうあります。

及川 やりたいことを重視して組織づくりをしていくと、どんどん新しい技術トレンドを取り入れる文化も醸成されそうです。

田中 おっしゃる通りで、私たちはけっこう早い時期からコードの管理・共有を「Apache Subversion」や「GitHub Enterprise」でやっていました。どれも導入のきっかけは、中途入社したエンジニアの「さくらの開発環境、古くないですか? 変えていいですか?」みたいな発言です(笑)。

 コンテナサービスを始めたときも、最初にやりたいと言い出したのは10代、20代の若者でした。ベテランエンジニアばかりの開発組織だと、「まだ仮想化でいいんじゃないの」みたいな話になって、サービス化が遅れていたかもしれません。コンテナ管理に「Kubernetes」を使おうと提案してクラスタを組み始めたのも、大体20代の若手です。

及川 新しい技術を取り入れたがるのは、大抵の場合、若者か変わり者ですよね。

田中 ええ。だからこそ多様性を生かすという思想が重要になると思っています。その際、気を付けなければならないのが、ダイバーシティー&インクルージョンです。今はさまざまな企業がダイバーシティー経営を実践しようとしています。ただ、本来はインクルージョン(組み込む、内包すること)する仕組みや文化がなければ多様性を担保できません。

 そこで当社は、年齢や経験のレベルだけで判断せず、やりたいかどうかという意思も尊重してダイバーシティー&インクルージョンを実践しようと努力しています。20代の役員を登用したり、専用サーバを作るチームにあえて新卒エンジニアを配属したりと、年齢も強みもバラバラな組織を作っていくことで多様性を担保し続けたいと思っています。

及川 そういう思想は、DXに取り組んでいる事業会社でもとても重要なものになっています。ただ、DX人材ということで外部から多くの人材を採用しても、既存の組織文化に馴染めず辞めてしまうという話もよく聞きます。この課題はどう解消するのがいいでしょう?

田中 新しく入った人の話にきちんと耳を傾ける。これが基本的な施策になるのではないでしょうか。1on1で何度も話し合い、お互いの理想と現状を共有する。こうやって信頼関係を築いてから、もろもろの変革を進めていくしかないと思います。

 それに突き詰めて考えると、新たに採用した社員が組織に適応するのをサポートするオンボーディング施策って本当は既存の社員にもやり続ける必要があるわけです。事業が変わっていけば、やるべきことも変わるので。だから、新しい人材を採用したときに表面化する課題は、そのまま既存組織の課題を考えるきっかけになります。このプロセスを何度も経験しながら組織全体を変えていく。これが正しい組織変革のやり方なのかもしれません。

及川 確かにそうですね。お話ありがとうございました。

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