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» 2019年12月06日 05時00分 公開

マシリトが行く!【後編】:『ドラゴンボール』を手掛けた『ジャンプ』伝説の編集長が明かす「ゲームプロデュースの神髄」 (1/4)

マンガをアニメやゲームなどへメディアミックスする際には何が大切なのか。鳥山明氏の国民的マンガ『ドラゴンボール』の担当編集者であり、『週刊少年ジャンプ』伝説の編集長「Dr.マシリト」こと現白泉社会長の鳥嶋和彦、バンダイナムコエンターテインメント取締役の内山大輔、バンダイナムコホールディングスIP戦略本部アドバイザーの鵜之澤伸、ゲーム情報サイト「電ファミニコゲーマー」の平信一編集長に聞いた。

[伊藤誠之介,ITmedia]

 9月26日にUnite Tokyo 2019運営事務局主催の「Unite Tokyo 2019」がグランドニッコー東京で開催された。その中のセッション「出版社とゲーム会社はなぜすれ違う?ドラゴンボールのゲーム化で酷(ひど)い目にあった…もとい勉強させて頂いた話」の模様は前編記事「『ジャンプ』伝説の編集長が、『ドラゴンボール』のゲーム化で断ち切った「クソゲーを生む悪循環」」と、中編記事「「これさぁ、悪いんだけど、捨ててくれる?」――『ジャンプ』伝説の編集長が、数億円を費やした『ドラゴンボールのゲーム事業』を容赦なく“ボツ”にした真相」でお届けした。

 鳥山明氏の国民的マンガ『DRAGON BALL(ドラゴンボール)』の担当編集者であり、『週刊少年ジャンプ』伝説の編集長「Dr.マシリト」こと現白泉社会長の鳥嶋和彦氏に加えて、バンダイナムコエンターテインメント取締役の内山大輔氏と、バンダイナムコホールディングスIP戦略本部アドバイザーの鵜之澤伸氏が登壇し、司会進行は、ゲーム情報サイト「電ファミニコゲーマー」を運営している株式会社マレ代表取締役社長の平信一氏が務めた。

 後編では、セッション後の記者会見で、登壇した4氏に改めてマンガをアニメやゲームなどへメディアミックスする際に何が大切なのかをインタビューした内容をレポートする。マンガとゲームの関係や、作品のプロデュースとは何かということを、さらに詳しく語ってもらった。

phot 鳥嶋和彦(とりしま・かずひこ)白泉社代表取締役会長。1976年に集英社へ入社後、『週刊少年ジャンプ』編集部に配属される。編集者として鳥山明、桂正和に代表される多くの漫画家を育成。『ジャンプ放送局』や『ファミコン神拳』といった企画ページも担当し、93年には『Vジャンプ』を立ち上げた。原稿を容赦なくボツにする“鬼編集者”としても有名で、『Dr.スランプ』のDr.マシリト、『とっても!ラッキーマン』のトリシマンなど、ジャンプ連載作品に登場するキャラクターのモデルにもしばしばなっている(撮影:山本宏樹)
phot 鵜之澤 伸(うのざわ・しん)バンダイナムコホールディングスIP戦略本部 アドバイザー。バンダイナムコゲームス(現バンダイナムコエンターテインメント)元社長。1981年にバンダイに入社し、ホビー部で「ガンプラ」や「ザブングル」といった玩具の営業・企画に関わった。83年からはフロンティア事業部で映画やアニメのプロデュースを開始。以降、『機動警察パトレイバー』(TVシリーズ、OVA)など多数の作品をプロデュースする
phot 内山 大輔(うちやま・だいすけ)バンダイナムコエンターテインメント取締役。CE事業部事業部長。コンシューマゲームのプロデューサーとして、「ドラゴンボール」や「NARUTO −ナルト−」などといったキャラクターゲームほか、さまざまなゲームに参画。過去には、「.hack」シリーズの初代担当プロデューサーとして、クロスメディア・プロジェクトも立ち上げた。現在は、同社のコンシューマ事業の責任者として、事業全体を統括している

ゲームもアニメと同じ“作品”であることに気付くのが遅かった

――マンガをゲーム化するにあたって、具体的に注意していることは? 

鳥嶋氏: 講演では内山さんが壇上で言ったけど、編集部ではキャラクターにこだわるの(中編記事「「これさぁ、悪いんだけど、捨ててくれる?」――『ジャンプ』伝説の編集長が、数億円を費やした『ドラゴンボールのゲーム事業』を容赦なく“ボツ”にした真相」を参照)。これはゲームだけじゃなくてアニメも同じだけど、キャラクターの解釈を間違えると、出てくるものがニセモノになっちゃうから。ここだけは間違えてほしくない。

 逆に言うと、アニメが始まるときには最初にキャラクターと世界観(を原作と合わせることが大切なので)、ここだけは原作者にキチッと確認してもらう。ここさえブレなければ、後は多少違っても原作通りになるんですよ。だからそこに注意しています。

――ゲームに期待するプラスアルファの要素は何ですか?

鳥嶋氏: ゲームは他の商品化と違って、ストーリーがあるわけですよね。原作の物語をもう一回、再体験できる。しかも自分でキャラクターを動かして。ここがものすごく大きな特徴で。アニメーションは見ることができる一方、自分で体験できるわけではない。自分が(『ドラゴンボール』の主人公である)悟空になって敵と戦えるというのは、ゲームにしかない醍醐味だから、これは大きいですよね。

――内山さんにお聞きしますが、マンガをゲーム化するに当たって大事にしていることは?

内山氏: さっき鳥嶋さんがおっしゃったように、われわれとしてはゲームって、ほかのキャラクター商品とは、ちょっと違っていると思っているんですね。なぜかというと、TVアニメと同じように動くし、原作のコミックスのように物語れるし、しゃべるし、音が出るし、触ることができる。この体験はやっぱりフィギュアとも、普通のトイ商材ともちょっと違うだろうなと。

 だからこそ、そのゲームの世界でお客さんが、子どもたちが何をしたいのかというのに幅を持たせて、ユーザーが自分で選択できる余地をいかに作ってあげるか、みたいなところを大事に考えていますね。全て自分で選択して、自分で選んで、例えば『ドラゴンボール』のナメック星の世界を冒険していくっていう。

鳥嶋氏: そうだよね。ゲームなら悟空にもなれるし、ベジータにもなれる。自分でね。

phot プレイステーション2『ドラゴンボールZ』:『ドラゴンボールZ』のストーリーを再現したバトルが楽しめる、対戦アクションゲーム。2003年2月にプレイステーション2で発売されたほか、同年11月にはゲームキューブでも発売された。本作の好評により、『ドラゴンボールZ2』『ドラゴンボールZ3』とシリーズ化された(ソニーのWebサイトより)
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