さて、その新広報戦略の中で、スバルは何を説明したのか? まず核心的なポイントを述べよう。今回の発表の中でスバルが「次の時代のスバルらしさ」と定義したのは、従来通りの「安心と愉しさ」で、その意味において従来の主張とブレはない。従来と違うのは、その「安心と愉しさ」とは何なのかについて、総花的にあれもこれもありますではなく、もっと具体的言及があったことだ。
スバルの中村知美CEO
まずは「安心」だ。スバルのいう安心とは「事故ゼロ」へ向けた取り組みであり、「人間を中心」思想によって、人命を守ることだ。
それは「認知・判断・操作」のうち、「認知・判断」を的確に行えるクルマづくりによって、事故機会そのものを遠ざける0次安全性能、「操作」が的確にできるクルマづくりによって動的に事故を回避する1次安全性能、そして万が一の事故の際、被害を軽減する2次安全性能の3つに分かれる。
死亡交通事故実態。スバルは米国と日本で低い死亡交通事故率を実現してきた(SUBARU技術ミーティング資料より)
これを実現するための具体的な次世代ハードウェアは、ドライバーを見守るドライバー・モニタリング・システム(DMS)と、スバル・グローバル・プラットフォーム(SGP)である。加えていえば、4次にあたるものとしてスバル・スターリンクを使った事故自動通報システムがある。救命開始が10分早まると、死亡率が約7割改善するといわれており、安全への貢献は大きい。
ドライバー・モニタリング・システム(DMS)を衝突軽減ブレーキのアイサイトと連携させ、安全性を高める(SUBARU技術ミーティング資料より)
事故の際に早期救命を実現するための、事故自動通報機能の概要(SUBARU技術ミーティング資料より)
- スバルが生まれ変わるために その1
筆者を、スバルは北米の有力ディーラーへと招待した。ペンシルバニア州アレンタウンの「ショッカ・スバル」は、新車・中古車を合わせた販売数で全米1位。新車のみに関しても、全米最多級である。「スバルは他と違う」と、この自動車販売のプロフェッショナルは、本気でそう思っている。けれど、具体的に何がどう違うのかが全く説明されない。北米ビジネスの成功について、何の戦略があり、何をしようとしているのか、それを知りたいのだ。
- スバルとトヨタ、資本提携強化でどうなるのか?
トヨタがスバルへの出資を強化して関連会社化するとともに、スバルもトヨタ株を取得する。スバルは、マツダ、スズキと並んでトヨタアライアンスにおいて、最恵国待遇を得たことになる。なお、ダイハツは、トヨタが全株式を取得し、すでに100%子会社となっている。つまり今回のスバルの株式相互保有によって、トヨタアライアンスの資本提携は一応の完結を迎える。
- スバルはこれからもAWD+ターボ+ワゴン
スバルは東京モーターショーで新型レヴォーグを出品した。レヴォーグはそもそも日本国内マーケットを象徴するクルマである。スバルは、日本の自動車史を代表するザ・ワゴンとして、レヴォーグはGTワゴンという形を死守する覚悟に見える。
- 自動車メーカーを震撼させる環境規制の激変
「最近のクルマは燃費ばかり気にしてつまらなくなった」と嘆いても仕方ない。自動車メーカーが燃費を気にするのは、売れる売れないという目先のカネ勘定ではなくて、燃費基準に達しないと罰金で制裁されるからだ。昨今の環境規制状況と、それが転換点にあることを解説する。各メーカーはそのための戦略を練ってきたが、ここにきて4つの番狂わせがあった。
- アイサイト 分かりにくい誠実と分かりやすい不誠実
スバルがレヴォーグに「アイサイト・ツーリングアシスト」を搭載。都内で行われた試乗会でこのツーリングアシストをテストした筆者はとても混乱した。それは……。
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