さて、スバルは確かに変わり始めた。最後にスバルとトヨタの関係について、スバルファンからの心配の声を見かけることが多いので、結びの節としてそれを加えておこう。
スバルファンの心配は、スバルのトヨタ化だ。往々にしてスバルファンはトヨタが嫌いなので、余計不安になるのだと思う。
2020年という時代に、提携先を自社のカラーで塗り潰すつもりでいるとすればそれはだいぶ時代遅れだろう。カネの力で君臨して平服させ、好きなように蹂躙(じゅうりん)することが個人的な快感になる人はいるかもしれないが、ビジネス的メリットはゼロだ。マウントしたいがために何百億円もカネを使う馬鹿はいない。
かつてダイハツが100%子会社化されたとき、トヨタの豊田章男社長に「ダイハツに期待する役割は何ですか?」と尋ねたことがある。その時豊田社長はこう答えた。「まずはダイハツさんが何をやりたいかです。トヨタがあれをやれ、これをやれと指図することではありません」。筆者は、それ以降のトヨタのやり方を見てきて、あの時豊田社長が言ったことは嘘ではなかったと感じている。
だからトヨタ色に塗り潰される心配はいらないと思う。むしろ、大トヨタの威光に萎縮(いしゅく)して、顔色をうかがってしまうことが一番怖い。スバルはスバルらしく、自分たちが進む道を社会に訴え、それに協力して、スバルのブランド価値を高めることが、株主としてのトヨタの存在価値だし、そうしてこそ出資の意味がある。その意味では、スバルが今回の発表で、スバルの価値を自ら再定義して、発表したことには大変大きな価値がある。スバルの未来に期待したい。
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う。
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