クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

変革への第一歩を踏み出したスバル池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/7 ページ)

» 2020年01月27日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

 では「愉しさ」はといえば、こちらはSGPとAWDである。まずはSGPによって応答のレスポンスと正確性の引き上げを狙う。ドライバーの操作に対する車両の応答遅れは、スバルによる実測値で450ms、つまり0.45秒あるのだそうだが、このうち65%はステアリング―サスペンション―車体の経路で起きている。つまり、これらのルート上の全箇所の剛性を徹底的に高めることで、応答遅れを改善できる。さらに、さまざまなシチュエーションでの走破性を高めるために、より高度なAWD制御を行う。

車両の応答遅れを減らすために、その65%を占めるステアリングとサスペンション、車体ハードウェアに起因する部分を、剛性の向上で改善する(SUBARU技術ミーティング資料より)
AWDを進化させ、ドライバーやシチュエーションに合わせて駆動力の配分を制御する(SUBARU技術ミーティング資料より)

 これら全体を見渡して、若干乱暴にスバルの価値を再定義すれば、それはすなわちビークルダイナミクスを高めることにある。もっといえば、スバルの最大の価値は、そのシャシーと駆動技術にある。スバルはそう考えた。これは筆者の一方的な見方ではなく、発表会場で、中村知美社長に確認している。

 それは極めて妥当な判断だと思う。すでにスバルはトヨタとの共同開発によって電気自動車(EV)の開発を行うと発表している。だからパワートレイン領域において、スバルのアイコンである水平対向エンジンを不動の核に据えるわけにはいかなくなりつつある。その意味で、エンジンがモーターに変わろうとも、変わらないシャシーの高い技術を、20年代のスバルの中心的価値とするのは、極めて順当な考え方だと思う。

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