では「愉しさ」はといえば、こちらはSGPとAWDである。まずはSGPによって応答のレスポンスと正確性の引き上げを狙う。ドライバーの操作に対する車両の応答遅れは、スバルによる実測値で450ms、つまり0.45秒あるのだそうだが、このうち65%はステアリング―サスペンション―車体の経路で起きている。つまり、これらのルート上の全箇所の剛性を徹底的に高めることで、応答遅れを改善できる。さらに、さまざまなシチュエーションでの走破性を高めるために、より高度なAWD制御を行う。
車両の応答遅れを減らすために、その65%を占めるステアリングとサスペンション、車体ハードウェアに起因する部分を、剛性の向上で改善する(SUBARU技術ミーティング資料より)
AWDを進化させ、ドライバーやシチュエーションに合わせて駆動力の配分を制御する(SUBARU技術ミーティング資料より)
これら全体を見渡して、若干乱暴にスバルの価値を再定義すれば、それはすなわちビークルダイナミクスを高めることにある。もっといえば、スバルの最大の価値は、そのシャシーと駆動技術にある。スバルはそう考えた。これは筆者の一方的な見方ではなく、発表会場で、中村知美社長に確認している。
それは極めて妥当な判断だと思う。すでにスバルはトヨタとの共同開発によって電気自動車(EV)の開発を行うと発表している。だからパワートレイン領域において、スバルのアイコンである水平対向エンジンを不動の核に据えるわけにはいかなくなりつつある。その意味で、エンジンがモーターに変わろうとも、変わらないシャシーの高い技術を、20年代のスバルの中心的価値とするのは、極めて順当な考え方だと思う。
- スバルが生まれ変わるために その1
筆者を、スバルは北米の有力ディーラーへと招待した。ペンシルバニア州アレンタウンの「ショッカ・スバル」は、新車・中古車を合わせた販売数で全米1位。新車のみに関しても、全米最多級である。「スバルは他と違う」と、この自動車販売のプロフェッショナルは、本気でそう思っている。けれど、具体的に何がどう違うのかが全く説明されない。北米ビジネスの成功について、何の戦略があり、何をしようとしているのか、それを知りたいのだ。
- スバルとトヨタ、資本提携強化でどうなるのか?
トヨタがスバルへの出資を強化して関連会社化するとともに、スバルもトヨタ株を取得する。スバルは、マツダ、スズキと並んでトヨタアライアンスにおいて、最恵国待遇を得たことになる。なお、ダイハツは、トヨタが全株式を取得し、すでに100%子会社となっている。つまり今回のスバルの株式相互保有によって、トヨタアライアンスの資本提携は一応の完結を迎える。
- スバルはこれからもAWD+ターボ+ワゴン
スバルは東京モーターショーで新型レヴォーグを出品した。レヴォーグはそもそも日本国内マーケットを象徴するクルマである。スバルは、日本の自動車史を代表するザ・ワゴンとして、レヴォーグはGTワゴンという形を死守する覚悟に見える。
- 自動車メーカーを震撼させる環境規制の激変
「最近のクルマは燃費ばかり気にしてつまらなくなった」と嘆いても仕方ない。自動車メーカーが燃費を気にするのは、売れる売れないという目先のカネ勘定ではなくて、燃費基準に達しないと罰金で制裁されるからだ。昨今の環境規制状況と、それが転換点にあることを解説する。各メーカーはそのための戦略を練ってきたが、ここにきて4つの番狂わせがあった。
- アイサイト 分かりにくい誠実と分かりやすい不誠実
スバルがレヴォーグに「アイサイト・ツーリングアシスト」を搭載。都内で行われた試乗会でこのツーリングアシストをテストした筆者はとても混乱した。それは……。
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