行列ができる店があるのに、なぜ「たい焼き店」は増えないのか水曜インタビュー劇場(一丁焼き公演)(4/7 ページ)

» 2020年02月26日 11時20分 公開
[土肥義則ITmedia]

“おいしいたい焼き”を提供したい

土肥: 忙しい人であれば、「そんなに待たされるのか。じゃあいいや、今度で」となるかも。

辻井: そうなんです。6〜7分も待ってもらうのは悪いので、在庫が必要なんですよね。つまり、つくり置きをしなければいけません。ただ、時間が経つと冷めてしまうので、おいしくなくなる。味が劣化してしまうので、店内ルールとして、焼けてから20分経ったモノは、売らないことにしました。

土肥: つまり、捨てるわけですね。もったいない。

辻井: 当時、あんこもたくさん捨てていました。「今日はこのくらい売れるかな」と見込んで、あんこをつくるわけですが、いつも100%的中するわけではありません。廃棄量を少なくするために、1日2〜3回にわけてつくることも考えたのですが、中野の店は2階建てでして、2階であんこをつくっていました。そこで手を動かしていると、1階の作業を手伝うことが難しくなるんですよね。物理的に。

 店の売り場は、基本的にワンオペにしたくありません。焼く人は焼くことに集中して、売る人は売ることに集中してもらう。となると、焼く人、売る人、つくる人の3人体制でなければいけません。ただ、売り上げのことを考えると、3人は雇えない。といった事情があったので、当日の朝に、その日のあんこをつくって、店には焼く人、売る人を配置していました。

土肥: うーん、その問題を解決するのは難しそうですね。

辻井: 余ったあんこを捨てないという選択肢もありましたが、それはしませんでした。なぜか。捨てることに心は痛めていましたが、お客さんに、“おいしいたい焼き”を提供したかったから。

土肥: 「先日食べたたい焼きのあんこはしっとりしていたのに、今日のはパサパサしているな」となれば、お客さんは離れていきそう。で、いまもあんこは捨てているのでしょうか?

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