#SHIFT

新型コロナでも日本企業が社員に「テレワークさせなかった」真の理由正社員2万人調査から分析(2/2 ページ)

» 2020年03月31日 08時00分 公開
[服部良祐ITmedia]
前のページへ 1|2       

日本の人事制度がテレワークで失敗する訳

 背景にあるのは、日本独特の人事評価方式のようだ。「欧米型企業と違い、日本企業のほとんどは『成果』と『プロセス』の両面を評価する。成果主義だけでなく、従業員が『頑張った点』『挑戦したこと』も評価する仕組みだ」(小林さん)。

 一方、上司不在の在宅勤務では、この「プロセス」部分が完全に見えなくなる。「評価制度としては片腕をもがれたようなもの。現状の評価制度でテレワークすれば、上司も部下も評価の“不完全感”をためやすい」(小林さん)。日本企業がテレワーク化に二の足を踏んだり、制度があっても有名無実化する根本的な原因がそこにあるという。

 ただ東京などの都市封鎖(ロックダウン)もささやかれる中、やはりテレワークの浸透は急務だ。小林さんは「今は応急処置的な段階だが、日本も今後は一気にテレワーク化が伸びるかもしれない。その際、制度設計が伴っていないひずみが出てくるはず」とみる。

テレワークで生じる「格差問題」

 特に小林さんが指摘するのが、テレワークによって生じる「格差」だという。例えば、在宅勤務の向き不向きは業界・職種ではっきりと分かれる。運輸や医療・福祉などの業種、現場業と呼ばれる仕事は遠隔化が困難なため、会社間、担当間で「格差」が広がる可能性が高いという。「テレワークがこうした業種や職種間での不平等感を生まない工夫が求められる」(小林さん)。

 最後に小林さんが危惧するのが、テレワークの「個人間格差」だ。「特にITリテラシーの程度が如実に表れる。普段PCを使わない人だと、チャットの返信スピードが遅かったり、オンライン会議のたびに音声が出ないこともある」(小林さん)。こうしたITのスキルは急に向上するわけではないという。「従業員のITリテラシーの習得は、(やっておけば)新型コロナの終息後も企業にとって損の無いもの。これらのスキルのベースアップはまさに今、やるべきだろう」(小林さん)。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.