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コロナ禍を機に考える「定年後の自分」 60歳元社長を襲う孤独感「定年後の男性はひとり」コロナ禍を機に考える「定年後の自分」(2)(2/2 ページ)

» 2020年04月19日 05時00分 公開
[高田明和ITmedia]
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「男性のほうが人間関係が深い」と思え

 喫茶店やジム、図書館に行っても、定年男性は1人でいるのに、同年代の女性は集団でいる人が多く、楽しそうに見えると昭夫さんは焦っていますが、もともと女性は集団で過ごすのが上手です。

 女性の場合、子育てなどで住んでいる地域に友達ができるため、集まりやすいのです。そのため地域のボランティアやサークル活動に参加するのも、圧倒的に女性のほうが多い。いっぽう男性は、定年するまで地域での人間関係がなかった人は、めずらしくはありません。これらのことから考えても、男性が女性のようにはいかないのは当然なのです。

 目的がなくても、まるで呼吸するかのように話せるのも女性の特徴です。ただ、話した内容をほとんど覚えていない人も結構います。逆に、男性は会って話した内容はよく覚えている人が多い。だから焦るくらいなら、密(ひそ)かに男性のほうが、人間関係が深いと思うようにすればいいのです。

 男性の場合、目的や意味がなければ人と会えない人は少なくありません。そのため人と会うハードルが高くなっています。ですから女性の集団を見ると男性と同じ基準で考えてしまうため、余計に楽しそうに見え、焦ってしまうのです。もともと女性と男性はまったく違うと思っておいたほうがいいでしょう。

 女性はそれほど親しい人でなくても、集まって時間をつぶすことができる人は結構います。初対面でも集団行動することになると、気軽に話せる人もいるくらいです。一方で、ほとんどの男性は気軽に話せないから不愛想になってしまい、なかには目を合わせられない人もめずらしくはありません。

 例えば、定年後に夫婦でバスツアーに参加すると、女性は途中の休憩地点でも、ほかの女性と意味もなく話ができる人がめずらしくはありません。男性はほとんどが1人で、時間を持て余してしまいます。

phot 定年を病にしない』(ウェッジ刊)

 このことを 51 歳の男性編集者に話すと、「子どもの学校の集まりに参加すると、まさにそうです。母親はみんな楽しそうに話しているのに、父親同士が話すことはありません。あいさつさえまともにできない人もいます。だからみんな居心地が悪そうにしています」と言って苦笑していました。

 男性は、いつまでも経歴や地位から離れられない人が多いのも、気軽に話せない原因かもしれません。出世した人ほど、この傾向が強いといってもいいでしょう。「経歴や地位が分からないのに話せるか!」と上から目線になってしまう人が少なくないのです。

 これは会社員生活が長いので、仕方がないのかもしれません。デイサービスに通っているお年寄りでも、必要最低限のことしか話さず、ずっと不機嫌そうな顔をしている人のほうが多いくらいです。

 女性のほうが、コミュニケーション能力が高いように見えますが、だからといって男性よりも寂しい人が少ないということではありません。このことが分かっていれば、女性の集団が楽しそうに見えても、それほど焦ることはなくなるでしょう。

――「定年後の自分」を考えるヒント――

  • 定年後に経歴や地位は関係ない。それらはいずれなくなるものと、いまのうちから想定しておく。
  • 女性は一見、集団で楽しそうに見えるが、実はそれほど仲がよくなくてもしゃべれることが多い。女性の集団を見て焦るくらいなら、男性のほうが実は人間関係が深いと密(ひそ)かに思っておけばいい。
  • 男性同士では「どちらが偉かった」などと気にするため、他の男性と親しくしたり、社外での人脈を広げる機会を逸しやすい。定年後を見据え、社外では、会社生活でついてしまった「上から目線」を捨てるように努め、年齢・性別・肩書は関係なく気軽に話す・話しかけられる関係性を構築しておく

著者プロフィール

高田明和(たかだ あきかず)

1935年静岡県生まれ。慶應義塾大学医学部卒業、同大学院修了。医学博士。米国ロズエル・パーク記念研究所、ニューヨーク州立大学助教授、浜松医科大学教授を歴任後、現在同大学名誉教授。専門は血液学、生理学、大脳生理学。日本生理学会、日本血液学会、日本臨床血液学会評議員。脳科学、心の病、栄養学、禅などに関するベストセラーを含む著書多数。最近はマスコミ・講演で心と体の健康に関する幅広い啓蒙活動を行っている。自身もうつやHSP(超敏感気質)に長年苦しみ、HSPを扱い紹介した『敏感すぎて困っている自分の対処法』(監修、きこ書房)は日本での火付け役となり、話題を呼んだ。最近の著書に『「敏感すぎて苦しい」がたちまち解決する本』『HSPとうつ 自己肯定感を取り戻す方法』『HSPと発達障害 空気が読めない人 空気を読みすぎる人』(いずれも廣済堂出版)がある。


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