では、なぜこの採用格差が起こってしまったのでしょうか? 筆者は2つの要因が背景にあると考えています。
採用活動に出遅れた企業は、「取りあえず就活ナビを使っておこう」「取りあえず就活イベントに参加エントリーしておこう」と、他社も実施している一般的な施策のみで採用活動を行う予定だった企業が多いのではないでしょうか。
確かに就活ナビの台頭は、新卒採用マーケットに大きな変化をもたらしました。どんな企業でも同じプラットフォームで自社の情報を学生に周知でき、またそれまでは見向きもされなかった中小企業でも「大手企業と同じ立場」で就活ナビに掲載できることで、「各企業が平等」な接触機会を学生との間に持てるようになったからです。つまり、知名度がな低いような企業でも学生と接点を持てる可能性が広がりました。
しかし、便利に見える一方で、大規模イベントなどに集まる学生の多くは、実は有名企業に流れてしまい、結果的に自社の選考に参加する学生は少なくなる傾向があるのです。それは、たとえていうならば巨大な象にアリが立ち向かうようなもの。強者との競合を避けて自社で戦えるフィールドを選んだ方が、当然採用確率は上がります。採用活動では、“右へならえ”ではなく、自社の採用力を見極めて戦えるフィールドを選ぶことこそが重要になるのです。
リクルートワークス研究所が行っている大卒求人倍率のデータを見てみましょう。
20年卒の大卒求人倍率は全体で1.83倍となっています。注目すべきは従業員規模別の求人倍率です。1000人以上の企業では0.76倍、対して1000人未満の企業では3.34倍、さらに細かく見てみると、300人未満の企業では8.62倍と、従業員規模により大きな採用格差があるのです。そして、求人倍率は売り手市場のときにはさらに大手志向が強まり、格差が広がる傾向にあります。ナビサイトなど、いくら便利なプラットフォームがあったとしても、他の企業と差別化を図らなければ、採用に成功するのはとても難しいのです。
就活ナビのようなプラットフォームは、企業の利便性を上げたと同時に、その特性を十分に理解できていない企業にとっては、むしろ思考停止を生み出してしまいました。さらに、コロナショックとはいえ「売り手市場」にそこまで大きな変化はありません。常に自社の採用はどうあるべきかを考え、採用基盤を地道に作ってきた企業は、コロナショックで制約条件があっても積極的に活動を継続できた一方で、一般的な採用手法で実施していた企業はもろに影響を受けて、他の打ち手を出せずに格差が生まれてしまったのではないでしょうか。
ちなみに、多くの採用担当者は、新たな取り組みであるオンライン選考に関して「本質的なやり方はこれまでと変わらない」と言っています。これまでリアルで会っていたのがオンラインに変わっただけで、学生へのアプローチ方法が少し変化しただけと捉えているようです。このような企業は、コロナショックの前から「学生との接点をどう作るべきか」「自社で必要な人材はどんな人材か」「選考フローにおいてどのように必要な人材を見極めるべきか」といった採用の本質的な課題に向き合い実践してきていたのではないでしょうか。ウィズコロナで思うような活動ができず採用課題に直面した企業は、今からでも原点に立ち返り、「自社の採用はどうあるべきか」の再定義を行うべきです。
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