従来2本セットだった高圧水素タンクは3本に分割され、1本は前述の通りセンタートンネルに、2本目はリヤシート下に、3本目はリヤオーバーハングに横向きにマウントされる。チーフエンジニアはこの配置を「〒」マークに例えて説明した。3分割によって上手くセンタートンネルを利用しただけでなく、タンク容量を増やして航続距離を先代の約650キロから約850キロに延ばしている。しかも旧型はJC08、新型はWLTC基準なので実質的にはもっと差があることになるだろう。
実はこのタンクはそれなりに曲者で、700気圧という高圧に耐えるためにカーボンを積層で巻きつけるという手間のかかる部品であり、高圧に耐えるためにはボール型かボンベ型以外の形にはできない。だからこんなにレイアウトに苦労しているのだ。
センタートンネルに加えて、モーターの前後に各1本配置され「〒」レイアウトになった水素タンク
キャビンに対して、このタンク位置を可能な限り下げて室内空間を確保するために、エンジニアリング的に必要になったのがタイヤ外径の拡大だ。車軸の高さを上げないと、目標全高の中でキャビンとタンクの容量を高次元に両立できない。どうせ外径を上げるのであればと、トヨタはホイールサイズに20インチを採用した。19インチのグレードもあるが、いずれにしてもセダンとして法外なサイズである。しかしそれはむしろカッコのためではなく、レイアウト的必然性から採用されたものなのだ。
燃料電池は終わったのか?
2014年末にトヨタが世に送り出したMIRAIだが、最近話題に上ることは少なくなった。「燃料電池は終わった」とか「トヨタは選択を間違った」としたり顔で言う人が増えつつある。実のところはどうなのだろうか。
水素に未来はあるのか?
「内燃機関が完全に滅んで、100%全てのクルマがEVになる」という世界は、未来永劫来ないだろう。そのエネルギーミックスの中にまさに水素もあるわけだが、FCVにはいろいろと欠点がある。しかし脱化石燃料を目標として、ポスト内燃機関を考え、その候補のひとつがFCVであるとするならば、化石燃料の使用を減らすために「化石燃料由来の水素」に代替することには意味がない。だから水素の製造方法は変わらなくてはならない。また、700気圧という取り扱いが危険な貯蔵方法も変化が必要だ。
EVへの誤解が拡散するのはなぜか?
EVがHVを抜き、HVを得意とする日本の自動車メーカーは後れを取る、という論調のニュースをよく見かけるようになった。ちょっと待ってほしい。価格が高いEVはそう簡単に大量に売れるものではないし、環境規制対応をEVだけでまかなうのも不可能だ。「守旧派のHVと革新派のEV」という単純な構図で見るのは、そろそろ止めたほうがいい。
自動車メーカーを震撼させる環境規制の激変
「最近のクルマは燃費ばかり気にしてつまらなくなった」と嘆いても仕方ない。自動車メーカーが燃費を気にするのは、売れる売れないという目先のカネ勘定ではなくて、燃費基準に達しないと罰金で制裁されるからだ。昨今の環境規制状況と、それが転換点にあることを解説する。各メーカーはそのための戦略を練ってきたが、ここにきて4つの番狂わせがあった。
日本のEVの未来を考える(前編)
EVの未来について、真面目に考える記事をそろそろ書くべきだと思う。今の浮ついた「内燃機関は終わりでEVしか生き残れない論」ではないし、「EVのことなんてまだまだ考える必要ない論」でもない。今何が足りないのか? そしてどうすれば日本でEVが普及できるのかという話だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.