メカニズム的には、水素から発電するフューエルセル(FC)スタックを運転席の下にレイアウトし、インバーターとモーターをフロントに置いて前輪を駆動するシステムを採用した。リヤシート下とトランクには大小2本の高圧水素タンクを配置し、さらにリヤシート背後にバッテリーがマウントされる。
つまり、前後シートが臓物に持ち上げられて着座点が高くなる。そのためパッケージは必然的に上背が高くなり、全体にずんぐりとした体躯(たいく)に仕立てざるを得なかった。プリウスで手掛けたエコカーの形を意識しつつ、一方で革新的動力源を持つクルマとしての形を打ち出さなくてはならないという課題への悩みが見て取れる。
初代MIRAIのシステム構成。フロントモーターフロントドライブとなっていた
新型では、このユニット配置が全面的に改められた。それはおそらく商品としてのMIRAIの方向性が決まったということだろう。デザインを見れば一目瞭然。初代から翻って、ワイド&ローなシェープを目指した。かっこ悪い高額商品は売れない。スタイリッシュであることは高額商品にとって重要な商品価値だ。新型MIRAIはプチ富裕層にターゲットを絞り込み、ひと昔前の言葉で言えば「威張りの利く」クルマへの生まれ変わりを図っている。
シャシーにはクラウンやレクサス系FR車に採用されるTNGA世代のGA-Lプラットフォームを用い、それに合わせて、システムの配置は根本的に見直された。
心臓部であり発電を司るFCスタックは、刷新されて第2世代となった。容積で22%小型化されつつ、電力供給能力を114kWから128kWへと向上させている。初代のシート下から移設されて、従来フロントに配置されていたインバーターとセットでボンネット下に収められる。
- 燃料電池は終わったのか?
2014年末にトヨタが世に送り出したMIRAIだが、最近話題に上ることは少なくなった。「燃料電池は終わった」とか「トヨタは選択を間違った」としたり顔で言う人が増えつつある。実のところはどうなのだろうか。
- 水素に未来はあるのか?
「内燃機関が完全に滅んで、100%全てのクルマがEVになる」という世界は、未来永劫来ないだろう。そのエネルギーミックスの中にまさに水素もあるわけだが、FCVにはいろいろと欠点がある。しかし脱化石燃料を目標として、ポスト内燃機関を考え、その候補のひとつがFCVであるとするならば、化石燃料の使用を減らすために「化石燃料由来の水素」に代替することには意味がない。だから水素の製造方法は変わらなくてはならない。また、700気圧という取り扱いが危険な貯蔵方法も変化が必要だ。
- EVへの誤解が拡散するのはなぜか?
EVがHVを抜き、HVを得意とする日本の自動車メーカーは後れを取る、という論調のニュースをよく見かけるようになった。ちょっと待ってほしい。価格が高いEVはそう簡単に大量に売れるものではないし、環境規制対応をEVだけでまかなうのも不可能だ。「守旧派のHVと革新派のEV」という単純な構図で見るのは、そろそろ止めたほうがいい。
- 自動車メーカーを震撼させる環境規制の激変
「最近のクルマは燃費ばかり気にしてつまらなくなった」と嘆いても仕方ない。自動車メーカーが燃費を気にするのは、売れる売れないという目先のカネ勘定ではなくて、燃費基準に達しないと罰金で制裁されるからだ。昨今の環境規制状況と、それが転換点にあることを解説する。各メーカーはそのための戦略を練ってきたが、ここにきて4つの番狂わせがあった。
- 日本のEVの未来を考える(前編)
EVの未来について、真面目に考える記事をそろそろ書くべきだと思う。今の浮ついた「内燃機関は終わりでEVしか生き残れない論」ではないし、「EVのことなんてまだまだ考える必要ない論」でもない。今何が足りないのか? そしてどうすれば日本でEVが普及できるのかという話だ。
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