クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向
連載
» 2020年11月02日 07時00分 公開

池田直渡「週刊モータージャーナル」:やり直しの「MIRAI」(前編) (5/8)

[池田直渡,ITmedia]

GTを彷彿(ほうふつ)とさせるロングノーズ

 フェンダーの高さほぼいっぱいの巨大なホイールと、低いボンネット高、さらに着座位置が下げられたことによって、旧型比でウエストラインが下がり、セダンというよりはGT的なデザインに仕上がった。基本シェイプにイアン・カラムが手掛けたアストンマーチンDB7の風情を感じる。アストンと言えばGTの本流。4ドアのMIRAIはそれと全く同じとはいわないが、マスとしてのモチーフはとても近いところにあると思う。

 もっとも実物は形からイメージするより大柄で、特にホイールベースと全長が長い。ロングノーズ+ショートデッキのDB7に対して、MIRAIはロングノーズ+ロングデッキだ。2+2のDB7と異なり、実用的な後席を備える以上、避けられないのだが、そういう意味では形とスケール感の間に少しズレを感じる。余談だがそのズレ感はまたアストンマーチン・ラゴンダを想起させる。

骨太でわずかにウェッジを描くアンダーボディに対して小さなキャビンという組み合わせは、古典的GTのそれ

 しかしながら、ヘッドランプからフロントフェンダーを通ってリヤまでわずかに後ろ上がりに通ったショルダーラインが、小さくつままれたリヤスポイラーへとつながり、そのままぐるりと一周してアンダーボディを構築し、そこに相対的にコンパクトなティアドロップ形状のキャビンを乗せる手法は古典的ではあるが、それゆえに塊として骨太なものになっている。もっとGT然とさせたいならば、サイドシルあたりに黒いガーニッシュを使ってボディをもう少し薄く見せるという常套(じょうとう)手段もあるとは思う。

 古典的ロングノーズGTの形。それはつまり「FCVらしさ」に過度にこだわらず、まずクルマとしてカッコいいことを目指すということだ。それはおそらくこれからの10年を見据えた時に、FCVも動力源として「One of Them」になっていくべきだという認識の転換だろう。変わったものであるうちは例外に過ぎない。いつまでも例外であっていいわけではないのだ。

 これまでのトヨタデザインは、常に近接型で、クルマの直近に立ってみた時のディテール処理に引っ張られて、こういう塊のデザインが考えられていないか、あるいはうるさいディテールに邪魔されて骨太な部分がマスキングされてしまっていた。そういう意味では大進歩だといえる。現行プリウスが出た時、いったいどこへいくのかと呆然(あぜん)とさせたトヨタデザインは、長足の進歩を遂げている。

フロントだけでなくリヤもワイド&ローを意識したデザイン。空力的に高くしたいリヤデッキに対して、厚く重く見えない様にナンバー下をブラックアウト処理する

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