賃金の核となる「ベース給」は、等級制度にひも付く形で、等級ごとに決まる範囲給である(図表4)。このベース給の水準(ミッドポイントの水準)は、まず制度導入時に市場水準を調査して適正な水準を新たに設定しており、新制度導入後も、他社や市場の情報を参照し、毎年その優位性を確認している。
評価とベース給改定の関係をみると、過去の制度の場合、基本的には上がる一方の仕組みだった。これに対して現制度は、いまの水準や評価によっては上がるだけでなく、現状維持や下がることもある仕組みになっている。とくに各等級のベース給は、現在大きく4つの給与レンジに分かれるが、高いレンジにいけばいくほど、同じ評価でも上がり幅が小さくなる、もしくは下がることもあり得るという形である。
評価制度については、基本的には会社方針からブレイクダウンした目標の設定と実行が軸になる。
同社では現在、「Sony's Purpose & Values(存在意義と価値観)」を定めて社内外に明示している。具体的には、Purpose(存在意義)が、「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」。Values(価値観)は、「夢と好奇心」「多様性」「高潔さと誠実さ」「持続可能性」である。
このPurpose(存在意義)の実現に向けて毎年事業目標を立案するが、それを各組織目標にブレイクダウンし、さらにその組織目標を個人目標にブレイクダウンする。その実績(目標の高さ×達成度)を「実績評価」(年1回)として評価するほか、「行動評価」(年1回)も実施し、さらに実績評価に行動評価を加味した形での「役割遂行度評価(=総合評価)」がある(図表5)。
行動評価は、前述のPurpose & Valuesに基づいた「ソニー社員に求める行動」を定義しており、その行動実践度を評価するという形である。また、期初にはその期に伸ばすべき行動項目を定め、年間の上司とのコミュニケーションにおいては、この項目を中心に会話を行う。
評価と報酬の関係としては、役割遂行度評価は前述したベース給の改定(およびジョブグレード改定の参考)に反映され、実績評価の結果は業績給(=賞与)に反映される。
なお、業績給の特徴として、個人の成果に応じて、支給額がダイナミックに変動する仕組みになっていることがあげられる。
コロナ禍でのテレワークの急増もあって一気に注目を集めている感があるジョブ型雇用だが、まだ新卒一括採用や厳しい解雇規制などが残る日本で、欧米と同様のジョブ型がすぐに一般的になるとは考えにくい。そうしたなかで、「現在の役割」を基準としたソニーのジョブグレード制度は、ニューノーマル時代の人事制度の1つのモデルとして今後も注目される。
●社名:ソニー株式会社
●設立:1946年5月
●資本金:8802億円(2020年3月31日付)
●事業内容:ゲーム&ネットワークサービス、音楽、映画、エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション(モバイル・コミュニケーション/イメージング・プロダクツ&ソリューション/ホームエンタテインメント&サウンド)、イメージング&センシング・ソリューション、金融およびその他の事業
●従業員数:連結11万1700人(2020年3月31日付)
●所在地:東京都港区港南1-7-1
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