堀江貴文がコロナ禍で提示するミュージカル『クリスマスキャロル』 「“不要不急”こそが人間の本質」運営とマネタイズの難しさ(3/3 ページ)

» 2020年12月12日 07時15分 公開
[今野大一ITmedia]
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コロナ禍の新しいエンタメの形

 コロナと共存しながらの舞台ビジネスをどう展望しているのか。堀江は新たなヒントを話す。

 「多分今までとは考え方を変えなきゃいけないんですよね。例えば観客参加型のオンライン演劇のInside Theater(インサイドシアター)に注目しています」

 Inside Theaterとはリアル脱出ゲームの企画運営を手掛けるSCRAP(東京・渋谷)によるZoomを使ったリアルタイムの舞台だ。参加者は複数のミーティングルームを自由に移動し、演者と直接コミュニケーションをとりながら物語を進めていく。

 観客は観客席、役者は舞台といった従来の観劇スタイルではなく、参加者と役者が同じく登場人物として物語に入り込むことができる「没入型演劇」のオンライン版だ。公演によっては最大100〜300人まで入ることができ、シリーズの第一弾では完売公演が相次いだ。

 参加者は自宅からスマートフォンやPCを使ってZoom上で演劇を鑑賞。時には登場人物たちに直接語りかけたり、ゲームに参加したりすることで秘密や情報を手に入れる。さらに、その情報を役者にチャットで伝えるなどインタラクティブな体験も仕掛けられている。

 「ロールプレイングゲームなどを手掛けた有名な脚本家がシナリオを書いた公演もあり、キャラクタ−は舞台役者が演じています。リモートチケットを3000円ほど払ってプレイするのですが人気を博しています」(堀江)

 単に舞台を見るだけではなく、観客参加型にすることでコロナ禍の新しいエンタメとして受け入れられているようだ。

phot Inside Theater VOL.2『僕等のラストフェスティバル』(SCRAP提供)

 「リアル+オンラインも正解の1つですよね。僕なりの解としては富裕層をターゲットにして一人ひとりに深く課金をする形です。他にもいろいろな方法があると思います」

 コロナ禍では多くのイベントが休止に追い込まれ、これまでのようには開催できなくなっている。世間の風当たりも厳しい。それでもなぜ公演実施をやめなかったのか。堀江はコロナ禍でのエンタメの意義を語る。

 「新型コロナの影響で舞台ビジネスの世界は完全に様相が変わってしまいました。でもこれからの生き方を考える上でエンタメの要素は必要不可欠ではないでしょうか。“不要不急”と批判されることもありますが、僕は不要不急こそが人間の本質だと考えています。ライブ・エンターテインメントの灯を消さぬよう微力ながらも続けていきたい」

 コロナ禍という逆境の中でイベント運営やマネタイズの難しさに悩む経営者は少なくない。諦めることなく新たな可能性を見いだそうとする堀江の姿勢には、そのヒントがあるのではないだろうか。全てを自粛すればいいのではない。(敬称略)

phot 終演しあいさつをする堀江
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