――せっかく大量のワクチンを用意しても、受ける側が接種を嫌がることになっては、ワクチンが感染拡大阻止の切り札にならない可能性もありますね。ある民間調査では、新型コロナのワクチン接種は3割が「したくない」と答えていて、大きな課題になっています。
2016年の論文では日本はフランス、ボスニア・ヘルツェゴビナに次いで、世界で3番目にワクチン忌避率が高い国だといわれていました。日本の忌避率が高くなっているのは、子宮頸がんワクチンによる副反応によるものです。
ワクチン接種をしない人の英語名は正確には「ワクチン躊躇(ちゅうちょ、ヘジテンシー)」ですが、日本語訳では「忌避」と訳されて接種を嫌がっているような響きがあります。ですが実際はそうではないのです。
ワクチンを接種したくない人からすると、(日本政府の目指す接種は)拙速ではないかと思われるかもしれません。ただ、ほとんどの人はワクチン接種への知識がないため、どうしてよいか迷っている(ヘジテイト)か、怖がっているという状態で、決して忌避しているのではないのです。
――多くの国民が接種を受ける上で、どんな課題があると考えていますか。
ワクチン接種によって何を守るのかを自問する必要があると思います。自分の命を守るだけでなく、家族など周りの人を含めた全ての人を守る意味があるということですね。人口の3割をしめる65歳以上の高齢者は感染すると重症化、死亡するリスクが高い点と、重大だが、100万分の1の可能性しかない治療可能な副反応を比べた場合、リスクよりベネフィットの方が高いと言いたいです。
もし感染者が出た場合、(患者を受け入れる)病院はコロナの感染対策に追われて、がんの手術を待っている人に人員を割けなくなる可能性もある。ワクチン忌避が広がり、接種を受けない人が増え、せっかく欧米の企業から調達したワクチンが使われないというような事態になったら、これほど残念なことはありません。高価なワクチンを買いたくても買えない国の人たちから見たらどう映るでしょうか、と想像していただきたいと思います。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.